立ち上がるのも一苦労!質も量も低下する 筋肉が衰えるサルコペニアとは?

AI要約

加齢に伴う筋肉量の減少とその影響について紹介。

サルコペニアが生活に及ぼす影響や危険性について解説。

筋肉の質も低下し、生活動作や認知機能への影響が懸念される。

立ち上がるのも一苦労!質も量も低下する 筋肉が衰えるサルコペニアとは?

「足腰が弱っちゃってね」「物忘れが気になるんだ」「耳が遠くなって会話に苦労しているよ」──。

団塊の世代である筆者の周囲で、こんな話題が交わされるようになって久しい。歳を重ねれば心身に具合が悪い部分が生じるのは、自然界の生きものとして当然のことではある。だが、自らの知恵で長寿を獲得したヒトにとって今、充実した長い老いを過ごすうえで必要な「健康の継続」が課題になっている。

新刊『老化と寿命の謎』では、「加齢関連疾患とその周辺」を追い、健康長寿への道を模索する。

*本記事は飯島裕一『老化と寿命の謎』から抜粋・再編集したものです。

フレイル(加齢に伴う心身の衰え)の身体的側面の一つにサルコペニアがある。ギリシャ語で筋肉を意味するサルコと、喪失を表すペニアを組み合わせた造語で、1989年に米国の栄養学者・ローゼンバーグ博士が提唱した。当初は、加齢による骨格筋量の減少だったが、現在は量的減少に加え、筋力や身体機能の低下を含む概念になっている。2016年には国際疾病分類に登録され、疾病として位置づけられた。

長野県東御市にある公益財団法人・身体教育医学研究所の岡田真平所長(身体教育学)は、「筋肉合成に男性ホルモンが関わっていることから、筋肉量は女性に比べて男性のほうが多い。だが、加齢に沿ってホルモン量が低下するため、減少は男性で大幅だ」と解説した。さらに、「男女ともに、ふくらはぎ、太もも、尻や腰など下肢の筋肉量の低下が目につく」と指摘し、大阪医科大学衛生学・公衆衛生学教室の論文を示した。

同論文によると、80歳時の全身の推定筋肉量は20歳時に比べ男性で16.8%、女性で11.0%減っている。だが、下肢の筋肉量は男女とも20歳代頃から加齢に伴って明白に減少。80歳男性で同30.9%、女性で28.5%も少なくなっている。一方、上肢の筋肉量減少は男性16.4%、女性3.0%と小幅だ。さらに体幹部の減少率は男性で5.7%、女性ではマイナス1.0%となっている。

また、「歳を重ねると脂肪細胞が筋肉に入り込んでくるため、筋肉の質も低下する」と岡田所長は話す。

サルコペニアによって、立ち上がりにくくなる、つまずいて転倒・骨折の危険が生じる、入浴や着衣に難渋するなど、生活動作や歩行に支障が出てくる。認知機能の低下にもつながり、生活習慣病などとの関わりや生命予後への影響も指摘されている。