「足腰が弱っちゃってね...」「物忘れが気になるんだ...」最近よく聞く「フレイル」って何?

AI要約

加齢に伴う身体機能や認知機能の低下がフレイルと呼ばれ、重要な指標となっている。

フレイルは身体的、精神的、社会的側面で現れ、予備能の落ち込みにより自立度が低下する悪循環が起こる。

フレイルは可逆性があり、適切な支援や対応によって健康な状態に戻る可能性がある。

「足腰が弱っちゃってね...」「物忘れが気になるんだ...」最近よく聞く「フレイル」って何?

「足腰が弱っちゃってね」「物忘れが気になるんだ」「耳が遠くなって会話に苦労しているよ」──。

団塊の世代である筆者の周囲で、こんな話題が交わされるようになって久しい。歳を重ねれば心身に具合が悪い部分が生じるのは、自然界の生きものとして当然のことではある。だが、自らの知恵で長寿を獲得したヒトにとって今、充実した長い老いを過ごすうえで必要な「健康の継続」が課題になっている。

新刊『老化と寿命の謎』では、「加齢関連疾患とその周辺」を追い、健康長寿への道を模索する。

*本記事は飯島裕一『老化と寿命の謎』から抜粋・再編集したものです。

医療・保健・介護の現場で、フレイルという言葉が浸透しつつある。2020年春からは、75歳以上の後期高齢者を対象にした「フレイル健診」もスタートした。フレイルの定義や捉え方、評価方法などには論議があるものの、老化の指標の一つと考えられている。

フレイルとは、歳を重ねることによって身体機能や認知・精神機能などが低下する現象で、2014年に日本老年医学会が提唱した概念だ。健康と要介護の中間レベルとされ、英語のFrailty(虚弱)に由来する。

心身に負荷(ストレス)がかかった時に、回復に求められる予備能(負荷がかかった時の対応力)の落ち込みと捉えてもいいだろう。

一つの症状ではなく、加齢とともに現れる衰え全般であり、大きく、身体的側面(運動機能・臓器機能の低下)、精神・心理的側面(軽度認知障害、抑うつなど)、社会的側面(周囲とのネットワークの欠如、孤立)に分けられる。さらに近年、オーラルフレイル(咀嚼や舌や口の衰え)も重視されている。

東京都健康長寿医療センター研究所の藤原佳典副所長(公衆衛生学・老年医学)は、「それぞれの側面が連鎖して、自立度の低下が進む」と悪循環を指摘する。

「フレイルはイメージとしては理解可能だが、(予備能は検査数値などとして)測定できるものではない」と藤原副所長。それゆえ、フレイルには糖尿病や肥満、高血圧のような統一された診断基準はない。だが、いくつかの評価基準があるので、日本版CHS基準(図1)、簡易フレイルインデックス(図2)を紹介しよう。

一方、「可逆性」があるのもフレイルの大きな特徴で、藤原副所長は「適切な対応、支援によって、再び健康な状態に戻ることは可能」と語る。要介護に陥るか、介護を回避できるかの分岐点で、介護予防の観点から、きわめて重要な位置づけになる。