65歳以上の約3割が罹患、精神科医に聞いた「喪失感が引き金に」認知症を招く “老後うつ”

AI要約

夏もシニアにとってうつのリスクが高いことが紹介されている。高齢者は暑さや睡眠不足などのストレスにより、老人性うつにかかりやすくなる。日本の高齢化に伴い、老後うつの患者が増加している。

シニアがうつになる原因として、定年や配偶者の死、子どもの独立などの喪失感が挙げられている。一人暮らしの高齢者の数も増加しており、うつ症状を訴える高齢者が増えている。

シニアになるとストレスへの耐性が低くなり、感情のコントロールが弱まるため、他人とのコミュニケーションが面倒に感じられる。これがストレスを増大させ、うつ症状を引き起こす一因となる。

65歳以上の約3割が罹患、精神科医に聞いた「喪失感が引き金に」認知症を招く “老後うつ”

 “うつ”というと、いわゆる五月病の季節や、日照時間の減る晩秋~冬にかけて増える印象だが、実は夏も、うつになりやすい。特にシニアには要注意な季節だ。

「夏になると寝苦しい夜が続きますが、実は暑さによる睡眠不足や食欲不振などは、高齢者のうつ、いわゆる“老人性うつ(老後うつ)”の誘因になることがわかっています」

 こう話すのは、精神科医で、保坂サイコオンコロジー・クリニックの保坂隆院長。先生のクリニックには、日々、うつの症状を訴えるシニアが訪れる。超高齢化が進む日本では、シニア人口の割合が増えるにしたがって、「老人性うつ」が急増しているという。

「高齢者は自律神経の働きが鈍って、暑さ・寒さを感じにくくなりがち。本人は気づいていなくても、さまざまなストレスを受けていることもあります。夏は特に、室内温度の調節や、バランスのとれた食事、水分補給に注意して、不眠や食欲不振に備えてください」(保坂先生、以下同)

 高齢化によって急増しているという「老後うつ」。そもそも、シニアがうつに陥る原因とは?

「うつは年齢に関係なく、心身へのストレスが原因で発症しますが、シニアの場合だと、例えば定年で会社を離れたり、配偶者と死別したり、子どもが独立したりして、喪失感をきっかけにうつになりやすいのです。

 最近はひとり暮らしの高齢者数が多くなり、うつ症状を訴える方が急増しているようです」

「好々爺(こうこうや)」などという表現があるように、年齢を重ねると性格も柔和になると想像しがちだが、一方でキレる老人のニュースなども耳にする。実際はどうなのだろう。

「もとの性格にもよりますが、シニアになるとストレスへの耐性は低くなります。これは、感情のコントロールをつかさどる脳の活動が弱まるから。

 こうなると、他人を理解したり、相手とコミュニケーションを取り合ったりするのが面倒になってきます。そのため、思いどおりにいかないことが増えて、大きなストレスを感じるようになるのです」