生活の「足」奪われる不安…減少続ける免許返納 代替手段確保へ模索 これから 100歳時代の歩き方

AI要約

高齢者ドライバーの数が増加し、事故防止が課題となっている。警察は講習や検査を強化し、免許返納を促進しているが、返納者数が減少している。

埼玉県警の高齢者講習センターが設立され、講習や検査の待ち時間が短縮された。目的は運転能力を確認し、返納の機会を提供すること。

返納者数が増加していたが、最近は減少傾向にある。認知能力の衰えによる事故を防ぐため、高齢ドライバーへの適切な対応が求められている。

生活の「足」奪われる不安…減少続ける免許返納 代替手段確保へ模索 これから 100歳時代の歩き方

75歳以上の人口が昨年、初めて2千万人を超え、高齢ドライバーの事故防止が大きな課題となっている。警察は高齢者対象の講習や認知能力の検査体制を強化する一方、運転免許の返納を推奨するが、返納者は近年、伸び悩んでいる。背景には生活の足を失うことへの不安があり、代替手段の確保に向けた模索が続いている。

■講習や検査の順番待ち解消

「慎重にバックしてください」

助手席に座った教官が、ハンドルを握る高齢ドライバーに声をかける。埼玉県警岩槻高齢者講習センター(さいたま市岩槻区)で行われていた「乗り上げ講習」の一コマだ。段差に乗り上げたところでブレーキペダルに踏み替える技能を試す。高齢ドライバーが真剣な表情で車を止め、バックさせていた。

同センターは5月下旬に開設された。全国初の、高齢者を専門に講習や検査を行う警察運営施設だ。

70歳以上の人が免許を更新する際は実車指導などの高齢者講習、75歳以上には認知機能検査が義務付けられている。

従来、自動車教習所や運転免許センターなどで講習や検査が行われてきたが、県警によると、講習や検査まで2、3カ月かかる場合もあった。同センターは講習で1日120人、検査で180人を受け入れ可能で、稼働後、待機期間が1カ月程度にまで短縮したという。

講習や検査体制の強化には、増える高齢ドライバーの免許更新へのスムーズな対応と同時に、高齢者が自身の運転能力を把握し、免許返納の必要があるかを適切に判断してもらう狙いがある。

県警運転免許課の金泉豊次席は「これからも高齢ドライバーは増える。センターの稼働で、この受講ペースを維持したい」と話す。

免許返納者は減少続き38万人

警察当局は認知能力の衰えなどによる事故を防ごうと、高齢ドライバーに免許の自主返納を呼び掛けている。しかし、思うようには進んでいない。

警察庁によると、75歳以上の運転免許保有者数は平成26年の約450万人に対し、令和5年は約730万人と1・6倍に増えた。一方、返納者数は平成26年の約21万人から、東京・池袋で高齢ドライバーの車が暴走し11人が死傷した事故が発生した平成31(令和元)年には約60万人と3倍に増えたものの、以降は減少が続き、5年は約38万人にとどまる。

75歳以上の返納者も、平成26年の約10万人から事故のあった平成31(令和元)年に約35万人まで増加した後、5年は約26万人と減っている。