能登半島地震で全壊した漆器工房で伝統の「天日黒目」
石川県輪島市で、能登半島地震による被害を受けた大徹八井漆器工房が、伝統の漆精製作業を再開。
工房はウラナイ力によって全壊し、再建のために奮闘している職人たちの姿が描かれる。
漆精製が業界再建の一歩となると信じ、再生への希望を胸に作業を続ける。
能登半島地震で大きな被害を受けた石川県輪島市。輪島塗で使う漆を夏の強い日差しにさらして精製する「天日黒目(てんぴぐろめ)」の作業が22日、輪島市で行われました。
工房が全壊し解体作業が進む中、職人たちは伝統の作業を通して復興への思いを強めていました。
照り付ける日差しのもと、大きな桶の中で何度もかき混ぜられる漆。
「天日黒目」は輪島塗の中塗り・上塗りに使う漆を精製するため、日光に当てながらかきまぜて水分を減らす作業です。
大徹八井漆器工房 八井汎親会長「夏の風物詩のはじまりですね」
60年ほど前までは盛んに行われてきましたが、手間がかかることもあり、昔ながらの手作業で今も続けているのは大徹八井漆器工房だけです。
八井貴啓社長「元日はこんなこと考えられなかった。絶対廃業やと思ってたのが漆が見つかり桶も見つかり気付けばいまこうやって天日黒目やってるわっていう。俺1人じゃなにもできなかった」
今からおよそ3か月前の取材では…
八井貴啓社長(4月取材時)「こことここと車で支えたという感じで、それで止まったけど、いつこっちにバンと倒れてきてもおかしくない状態」
元日の地震で、50年にわたって作品作りをしてきた工房は全壊。
4月には仮設工房に移り、やっとの思いで再開への一歩を踏み出していました。
7月、慣れ親しんだ工房の解体が始まりました。
八井汎親会長「いやぁ切ないですね」
八井悦子さん「結婚して10年目で建てたんです。」「情けないのは情けないけど情けないと言って泣いておれんわっていう気持ちのほうが強くて。みんな頑張ってここまで来たんだからまた頑張ってやっていけば…」
作品のほとんどはがれきの下敷きになり、工房の中から取り出せたのはほんの一部でした。
八井貴啓社長「痛かったろう、ごめんなって一言ですね。もっと早く助け出せたらよかったですね。悔しいです」
八井社長は、こうも語ります。
八井貴啓さん「ここでまた死ぬんじゃなくてまた生まれ変わる。親父が建てた工房、次は俺が建てた工房っていう感じで考えている」
この日、精製した漆は例年の半分ほどの6キロ。2時間ほどかき混ぜると、乳白色だった漆は光沢のある茶色に仕上がりました。
八井汎親会長「大徹が天日黒目始めたから俺たちも一歩踏み出そうというような。おそらくスタートになると思う」
八井貴啓社長「やっとうちも一歩って感じなので必ずその時はやってくると思うのでみんなもあきらめずに頑張ってその日を待ってほしいですね」
八井さんたちは、伝統の天日黒目の実現が業界全体の再建に繋がればと願いを込めます。