人間国宝に西勝廣さん 輪島在住・漆芸沈金、繊細さ極め

AI要約

文化審議会は19日、重要無形文化財保持者(人間国宝)に沈金の西勝廣さんら6人を認定するよう盛山正仁文部科学相に答申した。石川県内在住の人間国宝は過去最多の10人となり、工芸技術部門の人数は全国1位を維持する。

西勝廣さんは輪島の草花を主な題材に、点彫りによる細やかな表現を得意としており、繊細な描写が特徴。作品は熟練の技による緻密なもので芸術性に富み、高い評価を受けている。

これまでの沈金人間国宝は輪島の作家ばかりで、今回の認定で石川県は10人となり、全国3位。西勝廣さんらの認定により、石川の伝統工芸がさらに広く認知されることが期待される。

人間国宝に西勝廣さん 輪島在住・漆芸沈金、繊細さ極め

  ●工芸・石川10人、全国1位

 文化審議会は19日、重要無形文化財保持者(人間国宝)に沈金(ちんきん)の西勝廣(かつひろ)さん(69)=輪島市気勝平町=ら6人を認定するよう盛山正仁文部科学相に答申した。西さんは繊細な描写が特徴で、重要無形文化財保持団体である輪島塗技術保存会の会員としても活動する。石川県内在住の人間国宝は過去最多の10人となり、工芸技術部門の人数は引き続き全国1位を維持する。

 西さんは輪島の草花を主な題材に、点彫りによる細やかな表現を得意としている。彫りと埋めの基本的な技術を磨き、沈金の表現を深めてきた。熟練の技による緻密な作品は芸術性に富み、高い評価を得ている。

 県立輪島漆芸技術研修所(輪島市)の講師として後進の指導、育成にも尽力し、県輪島漆芸美術館(同)で開催中の第80回現代美術展輪島展(一般財団法人県美術文化協会、北國新聞社、一般財団法人県芸術文化協会、輪島市など主催)にも出品している。

 歴代の沈金人間国宝はいずれも輪島の作家で、1999(平成11)年に前史雄さん、2018年に山岸一男さんが認定されている。前さんの父・大峰氏も1955(昭和30)年から77年に死去するまで認定されていた。髹漆(きゅうしつ)人間国宝の小森邦衞さんを含め、輪島の人間国宝は4人となる。

 今回の認定で、歌舞伎など芸能部門を合わせた人間国宝認定者数は東京39人、京都11人となり、石川は10人で全国3位。人口当たりの認定者数は石川が1位となっている。

 県内在住の人間国宝認定は山岸さん以来6年ぶりで、故人を含めた認定の累計は20人となる。政府は秋にも答申通り告示し、西さんらに認定書を交付する。

  ●県民の大きな誇り

 馳浩知事 誠に喜ばしい限りで心からお祝い申し上げる。工芸王国石川にとって、さらに厚みが増すこととなり、意義深く、県民にとっても大きな誇りとなる。世界に誇る石川の伝統工芸の新たなけん引役として、ご活躍を期待している。

  ●希望と復興に弾み

 坂口茂輪島市長 震災で暗いニュースが多い中、市民の希望や励みとなる。漆器業界にとっても喜びと誇りであり、復興に弾みがつく。輪島塗の層の厚みが増し、日本を代表する伝統工芸を国内外へ発信する推進力になると期待する。

 ★西勝廣(にし・かつひろ) 1955(昭和30)年2月5日、輪島市深見町生まれ。輪島実高、石川県立輪島漆芸技術研修所沈金科卒。日本芸術院会員で文化功労者の三谷吾一氏に師事。輪島実高で沈金人間国宝の前史雄さん、同研修所では前さんの父で沈金人間国宝の大峰氏や文化勲章受章者・蒔絵人間国宝の松田権六氏に指導を受けた。80年に日本伝統工芸展初入選。2000年に日本工芸会奨励賞、13年に文部科学大臣賞、19年に日本工芸会保持者賞。同研修所講師、輪島塗技術保存会会員として伝承に励む。日本工芸会石川支部常任幹事、漆芸部会長。一般財団法人県美術文化協会委員。19年県文化功労賞、20年紫綬褒章。輪島市気勝平町在住。

 ★人間国宝 重要無形文化財に指定された伝統工芸と芸能分野で、極めて高度な技術を持つ者として、国が文化財保護法に基づき認定した個人の通称。正式には重要無形文化財保持者という。認定は技術向上や後継者育成の支援が目的で、国から1人当たり年200万円の特別助成金が交付される。死亡すると認定は解除される。有識者でつくる文化審議会が年1回答申し、文部科学相が認定する。