須藤玲子&齋藤精一、現場を重視する2人の卓越したクリエイターによる「日本のものづくり論」

AI要約

グッドデザイン賞の審査委員長、東京クリエイティブサロンの統括クリエイティブディレクター、来年開催される大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクターを務める齋藤精一氏は、日本のものづくりの現状を語る。

繊維産業の魅力的な産地に焦点を当て、工場を訪れることで生産者のポテンシャルを引き出し、テキスタイルの創造に貢献する須藤さんの存在がクリエイティブに不可欠である。

齋藤氏は、今後のものづくりにおいて背景や技術を活用するミドルマンの重要性を強調し、須藤のようなアイデア提案力と地域特性理解が必要と述べている。

須藤玲子&齋藤精一、現場を重視する2人の卓越したクリエイターによる「日本のものづくり論」

グッドデザイン賞の審査委員長、東京クリエイティブサロンの統括クリエイティブディレクター、来年開催される大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター。数々の要職に就くパノラマティクス(旧ライゾマティクス・アーキテクチャー)主宰の齋藤精一氏は、日本のものづくりの現状を、その現場で目の当たりにしてきた。須藤の布づくりの現場である全国各地の工場へも、映像制作のために足を運び、交流している。後編ではだからこそ見える課題や可能性について聞いた。

現場を知り尽くす須藤さんはこれからの時代に必要な「卓越したミドルマン」

我が国の経済を支えていた時期もある繊維産業だが、その勢いはもはやない。それでも奥深く、魅力的な産地がのこっている。そう信じる須藤は積極的に工場を訪れ、すぐれた技術を持つ生産者と出会い、彼らのポテンシャルを引き出し、引き上げ、見たことのないテキスタイルをつくり出してきた。「技術」がクリエイティブの実現に欠かせないことを熟知しているからこそ、職人に敬意をはらい、共創の姿勢を貫く。「そこも玲子さんのすごいところで、技術や布の組成をほんとうに理解しているがゆえに、それぞれの工場の秘めたる可能性をぐんぐん引き出す」(齋藤氏)。

そういう須藤のような存在がこれからの日本のものづくり、クリエイティブには必要不可欠で、齋藤氏は「ミドルマン」と形容する。「これからのクリエイティブはゼロから新たに生みだすことではなく、すでにある素晴らしい資源や技術やデザインをいかに活用するかが求められる。それにはつま先がちょっと浮くような、思いもつかなかったアイデアを提起できる人物が必要で、玲子さんは本人も気づかぬ間にそれをやってのけている。ものづくりの背景を現場以上にわかっていて、その土地らしさも知り抜いていて、そこにご自分のアイデアを入れていく。『あの人ならこういう織りができて、あの人のところにあるあの機械で刺繍して』と組み立てられる。逆に言うと、背景や土地ごとの特色をわかっていないとそういう提案はできない」。