WHOが出した「公衆衛生上の緊急事態」─致死率が上がったエムポックス(サル痘)は“第二のコロナ”になるのか

AI要約

WHOがエムポックスの国際的な公衆衛生上の緊急事態を宣言した。流行はアフリカを中心に急速に広がりつつあり、致死率の高い系統Iの変異が懸念されている。

感染経路が子供を中心に広まっており、アフリカ以外の国でも感染例が報告されている。ワクチンの供給不足が深刻な問題となっている。

アフリカ大陸内での流行を抑え込むことが重要であり、先進国の支援が必要とされている。

WHOが出した「公衆衛生上の緊急事態」─致死率が上がったエムポックス(サル痘)は“第二のコロナ”になるのか

8月14日、世界保健機関(WHO)は、エムポックス(サル痘)がアフリカを中心に急速に流行しつつあるとして、「国際的な公衆衛生上の緊急事態」を宣言した。これは、まだパンデミック状態ではないが、パンデミックになることを防ぐ措置をとらねばならないとするものだ。

エムポックスに関する同宣言は2022年にも出されているが、今回の流行には前回とは異なる点がある。

まずは、ウイルスの系統と致死率だ。

「カンバセーション」に寄稿した豪ニューサウスウェールズ大学のグローバル・バイオ・セキュリティ学教授のC・レイナ・マッキンタイアによると、エムポックスのウイルスには大きく分けて2つの系統がある。

2022年に流行した「系統II」の変種は、致死率が最大1%と低かった。しかし、現在アフリカで感染者が急増しつつあるのは「系統I」の変種「Ib」で、致死率は最大10%と、格段に高い。また、人から人へ感染しやすい変異が起こっている可能性もあるという。

感染経路にも違いがあるようだ。2022年の流行時には、性行為による感染が大半とされた。

しかし現在、流行の「震源地」とみられるコンゴ民主共和国での感染者と死亡者の大半は子供だという。症例の4割が5歳未満の子供だという報道もある。つまり、日常的な接触やエアロゾルによる感染が起こっている可能性が高いとマッキンタイアは指摘する。

前回とは別物であり、より危険度が高いかもしれないと考えたほうがよさそうだ。

現在のところ、この系統のエムポックスは少なくともアフリカの14の国で報告されている。また、英「BBC」によれば北欧のスウェーデンでもアフリカ以外で初めて感染者が特定された。米国の保健福祉省など、アフリカ以外のほとんどの国の保健機関は、自国における重大な懸念を表明していないものの、人や物の移動によってアフリカ大陸の外へ拡大する可能性はあると、マッキンタイアは述べる。

「第二のコロナ」にならないための最善の対策は、アフリカ大陸内の流行を抑え込むことだ。

ケンブリッジ大学の免疫学准教授ブライアン・ファーガソンは声明で「有効なワクチンは存在するが、量が不足しており、必要な場所に届いていない」と懸念し、ワクチンの生産と配布を世界全体で加速させるように求めている。

先進国が連携と協力をして、もともとリソースに乏しいアフリカを支援することは、自分たちの国への流入を最小限にとどめることにもつながる。日本政府も8月15日、日本製のワクチンや接種針をコンゴ民主共和国に供与すると発表している。