「日本の従業員エンゲージメントは最低レベル」と米ギャラップ社、ビジネスパーソンのメンタルヘルス悪化にも警鐘

AI要約

米国のギャラップ社が公表した報告書では、世界のビジネスパーソンのメンタルヘルス悪化に警鐘が鳴らされた。日本の従業員エンゲージメントは依然として低く、要因として国民性や受身的な姿勢が指摘された。

世界の従業員エンゲージメントは高まっているが、日本は最低レベルにとどまっている。日本企業の特徴や文化がこの低さの背景にある。

報告書では従業員のエンゲージメントが低いことが世界経済に損失をもたらしていると指摘されており、メンタルヘルスの問題も深刻化していると警告されている。

米国の世論調査やコンサルティングを行うギャラップ社は、6月12日「グローバルワークプレイスの現状2024年版」を公表した。このレポートでは、エンゲージやストレスについて世界中のビジネスパーソンからアンケート調査し、生の声を集め、特に従業員のメンタルヘルス悪化に警鐘を鳴らした。日本は「従業員エンゲージメント」で昨年同様、最低レベルが続く。自らに肯定的な評価を控える国民性、受身的な仕事に対する姿勢が要因と見られる。(オルタナ総研フェロー=室井 孝之)

世界の「従業員エンゲージメント」は、過去最高の「23%」だったが、日本は熱意あふれる(従業員エンゲージメントの高い)社員の割合は「6%」だった。調査対象139カ国中では「最低レベル」に入った。最低レベルの6%は、エジプト(昨年対比-6%)、香港(同-1%)、日本の3カ国だった。

世界の主な国の数値は次の通りだ。フィリピン35%(+5%)、米国33%(-1%)、インド32%(-1%)、ブラジル31%(+3%)、タイ29%(+4%)、南アフリカ29%(+3%)、インドネシア25%(+1%)、豪州21%(+2%)、ウクライナ20%(-3%)、中国19%(+2%)、ドイツ15%(-1%)、韓国13%(+2%)、英国10%(土0%)、スペイン9%(-1%)、イタリア8%(+4%)、フランス7%(土0%)、日本6%(+1%)。

日本企業の従業員エンゲージメントが低い要因については、周囲に配慮し、肯定的な評価を控える国民性と仕事に対する姿勢とした。受け身的で、経営陣や上司が決めたことに従い、自分の会社の方向性を従業員自らが提案する風土は乏しいことが背景にあった。

ギャラップのジョン・クリフトンCEOは、「人々の精神的健康はさらに悪化している。過去 10 年間で、ストレス、悲しみ、不安、怒り、心配を表明する人の数が増加し、ギャラップ調査が始まって以来、最高レベルに達している」と警鐘を鳴らした。

2024年版の要約では、「従業員エンゲージメント」の低さが世界経済に 8.9兆米ドル、世界のGDPに対して9%の損失をもたらしていると推定した。従業員のメンタルヘルスに関しては、世界の従業員の20%が日常的に孤独を感じているとした。

「公正な賃金」「安全な労働」「出産」を目的とした労働法を持つ国の従業員は、ストレスが低い傾向にあった。一方、管理者のエンゲージメントが高まると、従業員のエンゲージメントも高まることが分かった。

組織全体でエンゲージメントの高い従業員を増やすと、「利益率」「従業員の定着率」「顧客満足度」など、さまざまな要素が向上することが分かった。