最高裁で勝訴「67年間苦しんできた。こんなに嬉しいことない」14歳で”強制パイプカット”された夫、意を決して妻に秘密打ち明けた 旧優生保護法は憲法違反、国に賠償命令

AI要約

旧優生保護法による強制不妊手術を受けた元夫婦の実話。

喜美子さんは1960年の中絶手術と同時に優生手術も受けていたことが判明。

宝二さんが最高裁判決を迎える中、喜美子さんは判決を見ずにこの世を去る。

最高裁で勝訴「67年間苦しんできた。こんなに嬉しいことない」14歳で”強制パイプカット”された夫、意を決して妻に秘密打ち明けた 旧優生保護法は憲法違反、国に賠償命令

最高裁大法廷は7月3日午後、「旧優生保護法」は憲法に違反するとして、国に賠償を命じる判決を言い渡しました。かつての優生保護法は、障害のある人などに強制的に不妊手術することを認め、およそ1万6000人が本人の同意を得ずに手術を受けたとされています。

兵庫県明石市に住む小林宝二さん、92歳。ともに裁判を闘ってきた妻の喜美子さんは、7月3日の判決を見ることなく、2022年この世を去りました。

「ひとりになってしまいました」「本当に寂しいですねぇ… まだまだ寂しい気持ちが続いています」(小林宝二さん)

ともに聴覚に障害があり、お見合いで出会った宝二さんと喜美子さん。絵に描いたようなおしどり夫婦でした。

しかし2人は笑顔の裏で、壮絶な苦しみを抱えてきました。1960年、結婚式を挙げた数か月後に喜美子さんの妊娠が判明します。2人はとても喜びましたが、宝二さんの母親が出産に反対。喜美子さんは中絶手術を受けさせられました。

「子どもを堕ろされたことで私は激怒しました。僕たちが子どもを生んではいけないというのは、間違った考えで、ばかげていると母には言いました」「(母は)お前たちは耳が聞こえないんだから子どもなんか育てられない、生んではいけないと言いました」(小林宝二さん)

悲しみにくれた2人。それでも“また子どもをつくろう”と話し合っていましたが、その夢は叶いませんでした。

実は喜美子さんには、中絶と同時に、旧優生保護法による強制不妊手術=優生手術も行われていたのです。2人がそのことを初めて知ったのは6年前、聴覚障害者の団体の調査で知ったのでした。

宝二さんと喜美子さんは同じ年に神戸地裁に提訴(1審は敗訴 2審で逆転勝訴)。そして、宝二さんはひとりで、最高裁判決を迎えることになったのです。

「私たちは騙されていたんだ、もう取り返しのつかないことをされてしまった」

「聞こえても聞こえなくても構わないと思うんです。子どもを育てることはできると思います」(小林宝二さん)