「君のために」と押し付けられる要求 組織に絶対いる“厄介な人”の被害を受けないための精神科医による自己防衛術とは?

AI要約

本書『職場を腐らせる人たち』は、厄介な人物が職場に及ぼす影響や対処法について解説した書籍である。

著者は精神科医であり、7000人以上の悩みを抱える人々を診察した経験を元に、15の厄介者のパターンを提示している。

腐ったミカンと例えられるような人々の影響は連鎖し、経済学的用語で言えば「外部不経済」の一例となっている。

「君のために」と押し付けられる要求 組織に絶対いる“厄介な人”の被害を受けないための精神科医による自己防衛術とは?

 刺激的で実にストレートな書名である。だが本書『職場を腐らせる人たち』(講談社現代新書)を読むにつれ、これがぴったりのタイトルであることがわかってくる。

 この手の人が一人いるだけで職場の雰囲気が険悪になり、周囲の人を困惑させ、時にメンタルな問題にまで発展させてしまう。こうした厄介者にどう対処し、自分や組織を守るべきかを冷静な視点で教えてくれる。

 著者の片田珠美氏はメディアでも活躍する精神科医である。本書では人間関係に悩んだ末に自信をなくしたり、イライラしたりして心のバランスを崩した人ら7000人以上を診察してきた経験をもとに、職場を腐らせる人について分析した。

 著者はそうした厄介な人について15のパターンに分類し、根性論を展開したり、過大なノルマを部下に押し付けたり、あれこれケチをつけたり、陰で足を引っ張りたりと、近くにいると困ってしまう人たちの事例を具体的に示す。会社や学校など組織に属している人が「確かにこういう人いる」と実感するケースも多いだろう。

 こうした人たちの何が悪いかと言えば、周囲の何ら落ち度のない人や立場的に弱い人が影響を受け、嫌な気持ちを抱え込んでしまうことで、最終的に精神的なダメージを受けてしまうからである。経済学的な用語で例えるなら、明らかな「外部不経済」であろう。

 本書は「腐ったミカン」と表現しているが、腐ったミカンの影響は連鎖する。周囲の人に悪い影響を広がるのだから、害悪以外の何物でもない。だが手口は巧妙である。

 決して暴言を吐くわけではなく、「君の将来を思って」「君のため」といった言葉を頻用し、あくまでも部下のためを思っているかのようなふりをすることだ。これは、万一部下からパワハラで告発されるような事態になれば、昇進どころか、降格さらには解雇の憂き目に遭いかないので、用心しているからだろう。 なぜこうした人たちが生まれてきてしまうのか、その原因についても本書は分析する。興味深いのは、こうした人たちの中に、実は途中まで組織で有望視されていた人が含まれている点である。それがどこかでかなわずに、希望どおり進んでいる人への羨望もあって迷惑な行動をする嫌な人物に変わっていくのである。