「何をやってもすべて思いどおりにいく人」の意外な正体とは?

AI要約

悩まない人と悩む人の違いは、「10回に1回の法則」を理解しているかどうか。失敗を受け入れ、そこから学ぶことで成功に近づくことが重要。

失敗を恐れず、可能な限り早く失敗を経験することが成功への近道。失敗を経て得られる教訓を元に、次の試みで成功しやすくなる。

失敗のパターンを学び、それを避けることで、どの分野でも無敵状態になれる。何度も失敗を繰り返し、その経験から学ぶことが重要である。

「何をやってもすべて思いどおりにいく人」の意外な正体とは?

 世の中には「何をやってもうまくいく人」がいる一方、「何をやってもうまくいかない人」もいる。この違いは何だろう?

本連載では、ビジネスパーソンから経営者まで数多くの相談を受けている“悩み「解消」のスペシャリスト”、北の達人コーポレーション社長・木下勝寿氏が、悩まない人になるコツを紹介する。

いま「現実のビジネス現場において“根拠なきポジティブ”はただの現実逃避、“鋼のメンタル”とはただの鈍感人間。ビジネス現場での悩み解消法は『思考アルゴリズム』だ」と言い切る木下氏の最新刊『「悩まない人」の考え方 ── 1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』が話題となっている。本稿では、「出来事、仕事、他者の悩みの9割を消し去るスーパー思考フォーマット」という本書から一部を抜粋・編集してお届けする。

● 「最初はいちばん安い家電を買う」理由

 新しい種類の家電を買うとき、あなたはどうやって商品を選んでいるだろうか?

 ネットの口コミを参考にする人、スペックやデザインを徹底的に比較・調査する人、家電量販店で実物を触ってみてから決める人、なんとなく直感で選ぶ人など、さまざまだろう。

 私の場合、「最初はいちばん安いものを買う」と決めている。

 以前はいろいろ情報収集して候補を絞り込み、最終的に「これだ」と惚れ込んだ商品を買うようにしていた。

 しかし、そうした家電製品選びに何度も失敗してきた。

 いざ実物を使い始めてみると、ボタンの位置が不便だったり、機能面で微妙な物足りなさがあったりする。また、メーカーがやたらとアピールしている新機能は、使ってみると、思ったほど必要性がない場合もあった。ただ、ひとたび決め打ちで商品を買ってしまうと、なんだかすぐに買い替えるのも憚られ、ズルズル使い続ける羽目になる。

 そういった残念な経験を何度かしてきたので、事前リサーチをするのはやめてしまった。

 その結果たどり着いたのが、「何も考えずいちばん安いものを手に取る」という手法である。

● 「悩まない人」になるための思考アルゴリズム ──「10回に1回の法則」

 本書では、「思いどおりにいかない」と「うまくいかない」の違いについて触れた際、ほとんどの物事は、あらかじめ想定していたようには運ばず、「問題」にぶつかるという話をした。

 計画や戦略を立てても、最初から思いどおりにいくことはない。

 大半は「失敗」する。

 余計なことに悩まないためには、失敗の捉え方も重要になる。

 「悩まない人」ほど「たぶん最初は失敗するだろう」と考えながら臨む。

 思いどおりにいかないことを前提に、失敗を織り込んだ計画を立てているので、計画がコケてもいちいちショックを受けずにすむのだ。

 逆に、悩む人は「絶対に思いどおりにいかせよう! 絶対に失敗を避けよう!!」と考えるクセがある。

 がんばれば失敗を避けられると思っているので、思いどおりにいかなかったときに必要以上に落胆する。

 本書に登場した、予定していた電車ルートがダメになってヘコんでいたAさんや、仕事をがんばったのに評価が上がらず意気消沈していたBさんは、まさにこの典型といえるだろう。

 私は常々、この世界には「10回に1回の法則」があると考えている。

 つまり、人が何かに本気でトライした場合、最初の9回は必ず失敗し、最後の10回目で必ず成功するようにできているという考え方だ。

 これもまた、「悩まない人」になるために、欠かせない思考アルゴリズムである。

 「10回に1回の法則」を前提としていると、物事が最初から思いどおりにいかなくても、悩むことはなくなる。

 9回目までは失敗するのが当たり前だからだ。

 多くの人は一発目で成功させようとし、その可能性に賭け、祈ってしまう。

 だから、失敗したときに大きく傷つき、悩みにはまり込んでしまう。

 一発目で思いどおりにいく人を「天才」という。

 しかし、大多数の人は天才ではない。

 最初から成功するはずはなく、必ず「9回の失敗」が先行する。

 一発目で外して人前で落ち込んでいる人は、「私は自分を『天才』だと思っています」と公言しているようなもの。ちょっと恥ずかしがったほうがいい。

● わざと失敗するくらいでちょうどいい ──なぜ「いちばん安い家電」を買うべきか?

 「10回に1回の法則」を前提とすると、失敗そのものの受け取り方が180度変わる。

 失敗するのが「当たり前」になるだけでなく、むしろ失敗が「望ましいもの」に意味を変えてしまうのである。

 この世界観のもとでは、物事に成功する最も確実な方法は「できるだけ早く9回の失敗を積み重ねること」。

 10回目にはどうせ成功することが確定しているからだ。

 逆に、まず9回の失敗をしない限り、成功にたどり着くことはできない。

 つまり、1回失敗すれば、その分、着実に成功に近づいたことを意味する。

 ときどき、「何回やってもうまくいかないんです……」と落ち込んでいる若手社員がいる。

 しかし、よく話を聞いてみると、実際には2~3回しか失敗していない場合が多い。

 「10回に1回の法則」で考えるなら、あと6~7回は思いどおりにいかないと思ったほうがいい。

 「自分は向いていない……」と悩む必要はまったくない。

 その後にくる10回目にはどうせ成功するからだ。

 それならば、さっさと9個の失敗をかき集めたほうがいい。

 わざと失敗するくらいでちょうどいいのだ。

 実際、どんな物事も、失敗から学ぶのがいちばん手っ取り早い。

 だから私は、わざと早めに失敗するようにしている。

 これが最初に「いちばん安い家電」を買うようにしている理由である。

 低機能の安物を買って実際に使えば、もちろんいろいろな不都合が出てくる。

 しかし、それらをひととおり体感すると、その家電に対して「ここがもっとこうだったらいいのに」「これに関しては私には特に必要がない」ということがわかってくる。

 そして、それをもとに自分にとって重要な条件を定めて、改めて同じ家電製品群を比較検討すると、「自分にとってベスト」な製品を選ぶことができるようになるのだ。

 家電に関するありとあらゆる不満(=失敗)をわざと体験することで、確実に成功できる状況をつくれば、ベストな買い物ができる。

 最初に買う安物は、言ってみれば「リサーチのための小さな投資」であり、買い替えにもそこまで躊躇しないですむ。

 これはいわゆる「テストマーケティング」と同じ考え方である。

 試験的に商品を市場に投げ込んでみてなんらかの「失敗」が起きれば、それは〝儲けもの〟。

 本格リリース前に問題やリスクの1つを、事前に潰せたことになるからだ。

 テストマーケティングとは、「潰すべき失敗要因を抽出する行為」である。

 大切なのは、小さく試すことで「あえて」失敗を積み上げることなのである。

● 「勝率91%の世界」に飛び込む方法

 「10回に1回の法則」には続きがある。

 あなたが9回の失敗を経て、10回目で成功したと考えてみてほしい。

 このとき、11回目には何が起きるだろうか?

 もちろん「成功」である。

 11回目だけではない。12回目も13回目も成功する。

 「10回に1回の法則」の世界観においては、11回目以降は「全勝」するのだ。

 法人営業をしているCさんがいる。

 新規クライアントを獲得するため、Cさんはまず1社目にアプローチし、「不要です」と断られる。

 これにより「aという条件の会社はこのサービスを買わない」ということがわかる。

 Cさんが2社目にアプローチするときは、条件aに当てはまらない会社を選ぶ。

 2社目には違う理由で断られることになるが、このときCさんは「bという条件の会社にもアプローチすべきでない」という学びを得る。

 さらに3社目には、aとbに該当しない企業を選ぶ。

 だが、ここでも「いりません」と言われてしまう。

 ふつうの人はこのあたりで心が折れ、「自分は営業には向いていない……」「そもそも製品がよくないのかも……」などと、悩みモードに入ってしまう。

 しかしCさんは、「10回に1回の法則」の考え方をインストールしていたので、悩むことはない。

 訪問先に断られるたびに「買わない顧客の条件」を集め、それに当てはまらない会社にどんどん営業先を絞り込んでいった。

 すると、「買わない顧客の条件」が9個集まったとき、ようやく10社目で見事に受注できた。

 そう、「失敗」とは「避けるべき条件」の洗い出し作業にほかならないのだ。

 肝心なのはこの先だ。

 11社目以降は思いどおりに受注を取れる。

 「買わない顧客の条件」を押さえきったCさんは「買う顧客」を選ぶ方法を身につけているからだ。

 その観点で見つけた顧客に100社までアプローチすれば、残りの91社はすべて受注できる。

 つまり、「10回に1回の法則」の先に待ち受けているのは、100戦91勝9敗、すなわち「勝率91%」という無敵の世界なのである。

● 「9タイプの失敗」がわかれば、どんな分野でも無敵になれる

 あなたのまわりには何をやってもすべて思いどおりにいく人がいるかもしれない。

 だが、そんな人を見て、「あの人は特別なんだ……」「自分には才能がない……」と考えるのは間違いである。

 その人が「全勝」状態にあるのは、すでに最初の「9回の失敗」をくぐり抜けたからにすぎない。

 注意すべきは、ただいたずらに9回コケればいいわけではないということ。

 Cさんは失敗するたび、「うまくいかないパターン」を学び、次のトライアルでそのパターンを必ず避けるようにしていた。

 つまり、「9回の失敗」とは、厳密には「9種類の失敗パターンの体得」を意味している。

 少なくとも9タイプの失敗を避けていれば、大コケすることはない。

 これが「無敵状態」のからくりである。

 一方、悩みがちな人ほど「やってみないとわかりません」と言う。

 しかし、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」といわれるように、どの分野においても、「完全に失敗するパターン」は存在する。特にビジネス分野では、現実にやってみなくてもわかることは意外と多い。

 いつまでも「やってみないとわかりません」と言っている人は、失敗パターンを学ぶ経験・意欲が不足しているにすぎない。

 まず9回失敗しよう。

 そして9種類の失敗パターンを学ぼう。

 最初そのパターンを避ければ、その分野で悩むことは何もなくなる。

 (本稿は『「悩まない人」の考え方──1日1つインストールする一生悩まない最強スキル30』の一部を抜粋・編集したものです)