「空気亜鉛蓄電池」実用化へ、シャープが実証

AI要約

シャープは2024年後半から空気亜鉛蓄電池の実証実験に乗り出す。太陽光発電システムと組み合わせ、ビルや工場向けに早期の実用化を目指す。

空気亜鉛蓄電池は亜鉛と酸素を利用し、負極周辺に結晶が生じにくい構造で、大容量で低コスト。車載用途ではなく、定置用途に適している。

レアメタルを用いず製造コストを抑え、蓄電池の導入コスト低減に貢献。シャープは1キロワット時当たり7万円以下の価格を目指している。

「空気亜鉛蓄電池」実用化へ、シャープが実証

シャープはリチウムイオン電池(LiB)より低コストで大容量にできる空気亜鉛蓄電池の実用化に向け、2024年後半から実証実験に乗り出す。太陽光発電システムに空気亜鉛蓄電池を接続して性能を検証する。まずはビルや工場の自家消費型発電向けを想定し、早期の実用化を目指す。コストの優位性を生かし、将来は大規模太陽光発電所(メガソーラー)向けなどの需要を見込む。

シャープは環境省の採択を受けて空気亜鉛蓄電池を開発しており、現在は実証実験に向けて容量12キロワット時の試作機を開発中。太陽光発電の電気を使い、充放電性能などを検証する。将来は商用機として、同2520キロワット時の実現を目指す。

同社の空気亜鉛蓄電池は負極活物質に亜鉛、正極活物質に酸素を利用する。亜鉛が酸化亜鉛になる反応を利用して放電する。

粉末状の亜鉛を含むアルカリ性の溶液を電解液に用いる。電解液はポンプにより槽内を循環し続ける構造のため、負極周辺に結晶が生じて短絡(ショート)を引き起こす蓄電池の問題が生じにくい。

充放電のセルとエネルギーの貯蔵部が分かれており、貯蔵部のみを大型化することで大容量にできる利点がある。電解液が循環するため車載用には向かず、定置用途を見込む。

LiBなどと異なりレアメタル(希少金属)を用いない。材料を調達しやすく製造コストも抑えられる。太陽光発電の普及には蓄電池の導入コスト低減が重要とされる。経済産業省は1キロワット時当たり7万円以下で設置できることが望ましいとしている。シャープは当面、この価格を想定して実用化を目指す。