家族より一緒にいる「サッカークラス」で培った揺るがぬ団結力。初の全国を目指す東京実は東海大高輪台に競り勝って今予選6連勝!

AI要約

東京実高と東海大高輪台高の激戦を振り返る。東京実高が団結力を武器に1-0で勝利し、次の試合に進む。

東京実高は団結力を『サッカークラス』で培い、6連勝を飾る。過去の苦い経験から切望する全国出場への想いが強い。

指揮官の手腕も光る東京実高は、チャレンジャーとして次戦に臨む。団結力を武器に、9連勝に向かう。

家族より一緒にいる「サッカークラス」で培った揺るがぬ団結力。初の全国を目指す東京実は東海大高輪台に競り勝って今予選6連勝!

[5.26 インターハイ東京都予選1回戦 東京実高 1-0 東海大高輪台高 東久留米総合高校グラウンド]

 学校生活も一緒なら、部活も一緒。時には笑い合い、時には涙を流し、時には先生に怒られたりもしながら、みんなでここまで歩いてきた。だから、負けたくない。勝ちたい。みんなで勝利を目指す試合を、1つでも多く戦いたい。

「僕らはまとまっているので、仲も良いですし、団結力は他の高校より上回っていると思います。みんなとはほぼ家族より一緒にいますね。飽きないですし、楽しいですけど、問題児ばっかりです(笑)」(東京実高・高井哲平)。

 『サッカークラス』で培った団結力で、難敵を堂々撃破!令和6年度全国高校総体(インターハイ)東京都予選1回戦が26日、東久留米総合高校グラウンドで開催され、初の全国を目指す東京実高と8年ぶりの全国出場権獲得を狙う東海大高輪台高が対峙した一戦は、後半21分にCKからDF加藤琉空(2年)が決勝ゴールを挙げた東京実が東海大高輪台を振り切って、1-0で勝ち切っている。6月2日に行われる2回戦では実践学園高と対戦する。

 試合は立ち上がりからお互いの持ち味を出し合う格好でスタートする。「自分たちはボールを持つスタイル」とFW峯大悟(3年)も口にする東海大高輪台は、MF矢野拓歩(3年)とMF土田歩汰(3年)のドイスボランチを軸にボールを動かしながら、MF廣恒龍(3年)やMF水島健斗(3年)が積極的にドリブル勝負。前半8分に右サイドを運んだ水島のシュートは、わずかにクロスバーをかすめて枠の上へ。21分にはセットプレーのチャンス。右から峯が蹴り込んだCKに、高い打点でDF安田礼(2年)が打ち込んだヘディングもゴール右へ逸れたものの、惜しいシーンを作り出す。

 一方の東京実は「2次トーナメント用にちょっと変化させてやりました。具体的にはちゃんとブロックを作ろうというところですね。『前から行きすぎないように』『イケイケにならないように』とだけ言いました」と片山智裕総監督。時には5バック気味にブロックを築きながらも、右からDF水品莉一(3年)、年代別代表も経験しているDF田中玲音(3年)、加藤が並んだ3バックの正確なフィードから、FW塩澤陸斗(3年)を頂点にMF新藤山登(3年)とMF廣畑亮介(2年)を配した前線の選手がゴールを狙う形を徹底。32分には水品のロングスローに田中が競り勝ち、DF江里口翔(3年)のシュートはDFにブロックされるも、狙いの一端を。前半の40分間はスコアレスで推移した。

 後半に入ると「焦れずに、いつか自分たちにチャンスが回ってくるぞというのをみんなで意志統一してやっていました」とキャプテンのMF高井哲平(3年)も話した東京実に流れが傾いていく。13分にはここも水品のロングスローから、加藤が頭で残したボールを、田中もヘディングで枠へ飛ばすも、ここは東海大高輪台GK山本桐真(3年)がキャッチ。19分にもMF石渡望叶(3年)を起点にMF脇村卓(2年)が左へ振り分け、廣畑のクロスにニアで合わせた塩澤のシュートは枠を外れるも、少しずつ“ターゲット”への焦点が合い始める。

すると、歓喜の瞬間は21分。左サイドで獲得したCK。廣畑が丁寧に蹴り込んだキックに、頭から突っ込んだ加藤のヘディングがゴールネットを確実に揺らす。「廣畑くんから良いボールが来たので、ニアでキーパーより先に自分が触りました。決めたらみんなのところに行こうと思っていましたし、もう最高でしたね」と口にした背番号3を中心に、大きく咲いた笑顔のオレンジの花。「セットプレーからチャンスが来そうな気がしたんです」(片山総監督)。1-0。東京実が一歩前に出た。

 ビハインドを負った東海大高輪台は「ワンタッチ、ツータッチで崩せてはいたんですけど、持ち過ぎちゃうこともあって、シュートまでは行けなくて苦しかったです」と峯も言及したように、途中出場のMF川上空(3年)やMF稲野遊(3年)のドリブルもアクセントに、細かいコンビネーションで相手を崩しに掛かるも、最後のタイミングがなかなか合わず、フィニッシュを繰り出すまでに至らない。

 終盤は東京実の高い集中力が際立った。「点を獲ってから苦しい時間が続いたんですけど、『この1点を守り切るぞ』という感じでした」とは田中。GK海老澤光(3年)も含めた守備陣がゴールに鍵を掛ければ、前線からは「凄くボールを追ってくれて、彼なくしては勝てなかったかなと思います」と片山総監督も賞賛した塩澤を筆頭に、激しいプレスでビルドアップを制限。相手の攻撃の芽を1つずつ、丁寧に摘み取っていく。

 そして、3分間のアディショナルタイムも消し去り、届いたタイムアップのホイッスル。「もう言葉に表せないくらい嬉しかったですね。片山先生にもずっと『ここが山場だ』と言われていて、その山場を越えた瞬間だったので、ちょっと泣きそうでした」と高井も笑顔を見せた東京実が“ウノゼロ”で逞しく勝ち切って、2回戦へと勝ち上がる結果となった。

 支部予選から数えて、インターハイはこの日が6試合目。つまりは6連勝を飾っている東京実だが、ここまではギリギリの戦いが続いている。支部予選決勝は駿台学園高に1-0で辛勝。1次トーナメントも本郷高戦は後半アディショナルタイムの2ゴールで逆転勝ちを収め、東大和南高戦も7人目までもつれ込んだPK戦を制するなど、「結構奇跡的な感じ」(片山総監督)で今予選を勝ち抜いてきた。

 チームを貫いている大きな武器の1つが“団結力”だ。実は東京実のサッカー部員の大半は、2年前に設置された『サッカークラス』に集められている。「サッカー部のヤツらはうるさいから、まとめた方がいいんじゃないかと(笑)。今は3年生が31人ですね」と笑ったのは片山総監督。今の3年生は初代『サッカークラス』の生徒たちだ。

 田中も「サッカークラスは自分たちが初めての代なんです。正直学校生活ではうるさいですけど(笑)、サッカーになった時の団結力には繋がっていると思います。みんなメチャメチャ仲は良いですね」と笑顔で言及。2年生の加藤も「3年生はもうメッチャ仲が良いなと思いますね。練習中もとにかくみんなで盛り上がっています。一体感もありますね」と“先輩”たちについて語っており、纏っている雰囲気の良さは2人の言葉からも窺える。

 ただ、彼らは『サッカークラス』ゆえの悔しさも味わっている。今年2月。新チームにとって初めての公式戦となる新人戦を控えたタイミングで、なんと体調不良者が相次いだ2年生の『サッカークラス』が学級閉鎖に。全員1年生で臨んだ初戦は、経験の浅い選手たちも奮闘したものの、結果は0-2で敗戦。思わぬ形で関東大会予選への出場を逃してしまったのだ。

 だからこそ、このインターハイに対する想いが強くないはずがない。「今の3年生は新人戦に出られなかったので、だからこそ余計このインターハイに懸ける想いは強かったです」(高井)「自分たちの代で戦う3大会中の1個の大会が潰れてしまったので、ここで少しでも多く試合をやりたいというのはみんなが思っていると思います」(田中)。彼らの言葉は間違いなく3年生全員の共通認識だ。

 片山総監督も今年のチームには手応えを感じているという。「能力的には悪くないですし、面白いと思いますね。1月には『目標はベスト4で……』とか弱気なことを言っていたので、『何言ってるんだ?何のためにサッカークラスがあるんだ?』と。そこから徐々にステップアップしていった感じです。ただ、だいたい勝ち出すと調子に乗るのはわかっているので(笑)、インターハイの本郷戦が終わった後にちょっと引き締めました」。熟練の指揮官は手綱の操縦法もお手の物。彼らの気持ちを乗せて、締めて、ここまで進んできた。

 1つの山場は越えたが、この先も負けたら終わりのトーナメントは続く。「ここで1つ山場を勝てましたけど、ここから先もカテゴリーが上のチームと当たりますし、自分たちはずっと言い続けている“チャレンジャー”として戦っていきたいです」。高井は力強くそう言い切った。全国出場までに必要な勝利は、あと3勝。『サッカークラス』で培った団結力は揺るがない。怒涛の9連勝への道筋が、東京実にはちょっとずつ、ちょっとずつ、見え始めている。

(取材・文 土屋雅史)