本当に「浅い」パリ五輪競泳会場は「低速プール」なのか…いまだ世界記録はひとつ…海外研究者の仮説には選手心理の影響も

AI要約

パリ五輪の競泳で世界記録が低調な理由を考察。

パリ五輪のプールが影響を与えている可能性について解説。

競技終了後にプール効果を検証することの重要性。

本当に「浅い」パリ五輪競泳会場は「低速プール」なのか…いまだ世界記録はひとつ…海外研究者の仮説には選手心理の影響も

パリ五輪の男女競泳では、まだ世界記録は一つしか出ていない。男子100メートル自由形の一つだけで、東京五輪で、6つ、リオ五輪で8つの水泳の世界新記録が樹立されたのと比較すると低調だ。なぜパリ五輪のプールは記録が出ないのか。

 やはりパリ五輪のプールは「低速プール」なのか。

 ここまでの世界記録は7月31日の男子100メートル自由形で中国の潘展楽が樹立したひとつだけ。自身が2月に樹立していた世界記録46秒80を大きく更新する46秒40をマークしたが、記録が期待された女子400メートル自由形でも、世界記録保持者であるアリアン・ティットマス(オーストラリア)、サマー・マッキントッシュ(カナダ)、ケイティ・レデッキー(米国)の3選手も自己ベストを破ることはできなかった。

 選手の間からも「このプールは記録がでにくい」の声が聞かれる。

 パリ五輪の競泳会場は2017年に著名な建築家のクリスチャン・ド・ポルザンパルクが設計し、総工費3億5300万ユーロ(566億円)を投じて建設されたパリ・ラ・デファンス・アリーナだ。完全密閉型の多目的アリーナで、こけら落としは、ラグビーのフランス対日本戦だった。五輪用にプールが設置されたが、水深が2.2メートルで、東京五輪のプールの3メートルに比べて80センチも浅い。

 その“浅さ”が低調な記録に影響を与えているのか。

 海外メディアや専門家がその原因を検証している。

 米の一般向けの科学雑誌「サイエンステフィック・アメリカン」は2日付で「パリ五輪の競泳プールは“遅い”のか。 数学に飛び込もう」という特集記事を掲載して専門家らの見解を伝えている。同誌によると、競泳科学を研究するインディアナ大学ブルーミントン校の生物物理学者ジョエル・M・ステイガー氏は、「競泳用プールは、設計次第で高速にも低速にもなる。考慮すべき変数は数多くあり、プールの深さ、コース、レーンの設計、水の戻り、底面の設計などだ」と説明した。

 またプールの形態だけでなく、つ観客席の大きさやプールの底に貼られたタイルなどが、スイマーの心理に影響するという。

「底のタイルのラインが離れていると選手は進むのが遅いと感じる」

 ただ、設計次第で高速にも低速にもなるが、「実際にどのような影響があるのかは、すべての競技を終了したあとに、このプールを使って詳しく検証するまではわからない」とし、過去の世界選手権や五輪での検証結果を付け加えた。

 2013年にバルセロナで開催された世界選手権では観客から「プールの流れが選手に不均等に影響しているのではないか」という懸念が寄せられたという。

 しかし、競技終了後にプールが解体されたため、研究者は、プールを直接調査することができなかった。代わりに、研究チームは全選手のタイムを調査し、過去のパフォーマンスと比較し統計分析を行った。その結果、「選手が泳ぐ方向やレーンによって有利または不利があることがわかった」という。

 レーンによる横波の影響によるタイム差は今や常識的だ。