くぎやねじを一切使わず、人工衛星に光る木工芸の職人ワザ 京都大学などが木造人工衛星を開発

AI要約

京都大と住友林業が木造人工衛星を完成させ、世界初の打ち上げを実現。10センチ四方の立方体の超小型サイズで、伝統工芸技術を駆使して組み上げられた。木材利用の可能性を探るため、宇宙空間へ放出される予定。

開発に参加した「黒田工房」の臼井浩明代表が木工芸の技術を活かし、精密な作業に成功。木材同士を強くはめ合わせる技法を用いて、木造人工衛星を完成させた。

宇宙空間では金属や接着剤の使用が難しいため、木材を直接つなぎ合わせる技術を持つ臼井さんの協力が不可欠であった。

くぎやねじを一切使わず、人工衛星に光る木工芸の職人ワザ 京都大学などが木造人工衛星を開発

 京都大と住友林業はこのほど、世界で初めて宇宙に打ち上げられる木造人工衛星を完成させたと発表した。10センチ四方の立方体の超小型サイズで、本体は日本の伝統工芸技術を駆使して組み上げたという。打ち上げを経て、10月頃に宇宙空間へ放出される予定で、耐久性などを検証し、人類の宇宙活動における木材利用の可能性を探る。

 京大などが開発した木造人工衛星は、伝統工芸で培われた技術が生かされた。百分の1ミリ以下の高い精度が要求されたが、木工芸の職人がくぎやねじを一切使わず、熟練の技で組み上げた。

 開発チームに加わったのは「黒田工房」(京都市)の臼井浩明代表(52)。大津市に工房を構え、国宝の障壁画の修復などを手がける。昨年、文化庁から表装建具製作分野で選定保存技術保持者に認定された。

 宇宙空間では温度変化が激しく、熱で膨張する金属や接着剤の使用を避ける必要があるため、木材を直接つなぎ合わせる技術を持つ臼井さんが協力を依頼された。

 臼井さんは、スタッフの崔錬秀さん(33)とともに手作業で板材を丁寧に加工。きりだんすなどに使われる「留形隠(とめがたかく)し蟻組接(ありくみつ)ぎ」と呼ばれる技法を用いて、木材同士を強くはめ合わせることに成功した。臼井さんは「普段の作業以上のレベルで精密性が求められたが、それを実現できたことは感慨深い」と話していた。