8割がメロンからの転作組 温室栽培の燃料費高騰でパクチー農家に…今では全国有数の産地【静岡発】

AI要約

パクチー栽培が盛んな静岡県磐田市周辺では、JA遠州中央・香菜部会がパクチーの出荷規格を確認する目揃え会が開かれる。中国料理で欠かせないパクチーは、夏場の栽培が難しいため、生産者たちが品質管理に努めている。

JA遠州中央は全国に先駆けて1981年にパクチー栽培をスタートし、現在25人の生産者が所属している。磐田市や袋井市で栽培されるパクチーのほとんどは、ガラス温室で栽培されている。

パクチー栽培に転作した磐田市の農家・池之谷衛さんは、重油価格の高騰でメロン栽培が困難になったことから転作を決断。将来を見据えながら、品質の良いパクチーを栽培している。

8割がメロンからの転作組 温室栽培の燃料費高騰でパクチー農家に…今では全国有数の産地【静岡発】

タイ料理などに使われるパクチー。2016年には有名グルメサイトが「今年の一皿」にパクチー料理を選ぶなどブームが巻き起こった。このパクチーの全国有数の産地が静岡県の磐田市周辺だ。メロンの温室栽培が盛んなこの土地がパクチー産地になったのには理由がある。重油価格の高騰だ。

2024年6月、磐田市で開かれていたのは、JA遠州中央・香菜(しゃんさい)部会の目揃え会だ。香菜とは、パクチーの中国名。パクチーの栽培が難しい夏の暑い時期に品質を落とさないよう、生産者たちが出荷の規格などを確認した。

JAの担当者は「パクチーについては他産地に比べ優位な販売ができている。昨年度の夏場は絶対量不足になることもあり、市場からの注文に十分に応えることができなかった。今年は体調管理に注意して、1ケースでも多く出荷していただければ」と生産者に依頼した。

中国や東南アジアの料理には欠かせないパクチー。2016年には日本でも“パクチーブーム”が起きた。

マスクメロンの産地として知られる袋井市や磐田市などをエリアとするJA遠州中央は、全国に先駆けて1981年にパクチー栽培をスタート。チンゲンサイや豆苗といった、中国野菜の栽培に取り組んだのがきっかけだった。

2015年には香菜(=パクチー)部会が設立され、2024年7月現在で25人の生産者が所属している。JAの担当者は「品質の良さと独特の強い香りを評価してもらっているので、期待を裏切らないように、しっかりと栽培しながら、お客様に届けられるように続けていければ」と話す。

磐田市と袋井市で栽培されるパクチーのほとんどがガラス温室での栽培となっている。

磐田市のパクチー農家・池之谷衛さん(58)は10年ほど前からパクチー栽培を始め、現在は香菜部会の部会長を務めている。池之谷さんのこだわりは種を蒔くとき機械ではなく手で蒔くことだ。「発芽もいい」と言う。

農家として40年のキャリアを持つ池之谷さんだが、以前は30年にわたって温室メロンを栽培していた。

静岡県の特産品として国内外からも人気を得ている温室マスクメロン。品質を保つために冷え込みが厳しい夜間でもハウス内の温度を20℃程度に保つ必要があり、毎年10月頃から5月頃まで重油を使って暖めて栽培している。

しかし、重油価格の高騰で経費が増加し、池之谷さんはパクチー栽培へ転作した。

池之谷さんは「知っている中で(重油価格が)一番安い時は(1L)30円代。いま100円を超えているので3倍近く。燃料の高騰や将来を考えて、一人でやるにはメロンはきついと思って、周りで先にパクチーをやっていた人がいたので相談しながら決めた」と転作の理由を説明する。