意外!少子化を助長する「悪の権化」東京に、じつは出生率で「全国ベスト2」という“別のデータ”が存在していた…!日本の少子化対策を惑わせる「合計特殊出生率の大問題」

AI要約

日本の少子化の原因は東京だけにあるわけではなく、合計特殊出生率を地域ごとに比較することは適切でない。

合計特殊出生率は地域の出生率を正確に示す指標ではなく、女性の移動などで数字が歪められる可能性がある。

地域ごとの出生率を考慮せずに少子化対策を検討することは、誤った方針を立てる原因となる可能性がある。

意外!少子化を助長する「悪の権化」東京に、じつは出生率で「全国ベスト2」という“別のデータ”が存在していた…!日本の少子化対策を惑わせる「合計特殊出生率の大問題」

 日本の子どもが減っているのは、本当に東京のせいなのか。

 6月5日に厚生労働省が発表した人口動態統計によれば、合計特殊出生率は1.20となり8年連続で低下して、統計開始以来もっとも低くなった。さらに、厚労省は都道府県ごとの出生率も発表したが、全国1位だった沖縄県の1.60に対して、全国最下位の東京都は0.99だった。

 これを見れば、「日本の少子化は東京のせいだ!」と誰もが思うだろう。しかし、この統計の公表のされ方は、エコノミストや社会保障の専門家から「かなり胡散臭い」と思われていることをご存知だろうか。

 合計特殊出生率は、国全体の出生率として参考にするには有効だが、地域ごとの出生率を比較するには、まったく役に立たないからだ。

 「あの地域は子どもがたくさん生まれている、あの地域ではほとんど生まれていない」と語るには、合計特殊出生率は例外的な事情(ノイズ)がありすぎるのだ。

 少子化対策を議論するのに合計特殊出生率の地域差を用いることが適さない理由は、様々な識者によって指摘されている。たとえば、人口動態に詳しいニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏はこう言っている。

 「出生率の高い自治体ほど子どもが増える、もしくは子どもの減少スピードが遅い、といった傾向は残念ながら我が国においてはない」

 「TFR(筆者注:合計特殊出生率)の高低を比較することによって、各都道府県の子ども人口増加政策(少子化対策)の成果の成否をうかがい知ることはできない状況である」

 (「人口動態データ解説-合計特殊出生率誤用による少子化の加速に歯止めを-自治体間高低評価はなぜ禁忌か」2020年9月8日 https://www.nli-research.co.jp/report/detail/id=65572? pno=1&site=nli)

 合計特殊出生率は、一人の女性が一生の間に生む子どもの数の平均を表す指標で、具体的には15歳から49歳までの女性の年齢別出生率を合計したもの。年齢別出生率はその年齢の女性の数を「分母」、この年齢の女性が生んだ子どもの数を「分子」とし、子どもの数を女性の数で割ることで求められる。

 合計特殊出生率を計算するときのポイントは、結婚していない女性も「分母」に含まれるということだ。

 合計特殊出生率の計算方法が引きおこす問題をざっくりと言ってしまえば、子どもを生む予定のない女性がAエリアからBエリアに移動するだけで、見かけ上、Aエリアの出生率は上がりBエリアの出生率は下がってしまうということだ。

 よって、地方から東京に就労や就学が目的の女性が移動するだけで、東京の合計特殊出生率は下がってしまうのだ。

 これは、東京だけに限らない。

 たとえば女子大の多い自治体に全国から女子学生が集まってくれば、その自治体の合計特殊出生率は下がる。その顕著な例が京都市東山区で、今回の調査でも同区は0.76と全国の市区町村で最低だった。東山区には短大や大学が集積しており、人口の1割近くが学生であることが影響している。