仕事をするはずがネットでダラダラ…「オンライン上でマルチタスクができる人は3%」という現実 “先延ばしグセ”の対処にはSNSの強制遮断も効果的

AI要約

人々がなぜ先延ばしをしてしまうのか、その理由とは。

ストレスや感情の影響が先延ばしを引き起こす可能性がある。

身近な改善策やデバイスを活用して、先延ばしグセを克服する方法。

仕事をするはずがネットでダラダラ…「オンライン上でマルチタスクができる人は3%」という現実 “先延ばしグセ”の対処にはSNSの強制遮断も効果的

「今日こそ」と思ってやりたかったことをまた先延ばしにしてしまった――。そんな経験をお持ちの人は少なくないだろう。なぜ先延ばししてしまうのか。どうすれば先延ばしグセを克服できるのか。著書『すぐやる脳』が話題の脳神経外科医の菅原道仁氏が解説する。

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 イギリス・シェフィールド大学のフスキア・シロワ教授は2015年、イギリスの医学誌『Journal of Behavioral Medicine』で次のような指摘をしています。

「先延ばしをする傾向がある人は、自分の判断や行動が、将来的にどんな影響を及ぼすかを理解する力が弱い。自分の将来のことを抽象的かつ他人事ごとのようにとらえ、自分の将来像に対して感情的なつながりをもたない」

 また、その状態を「一時的な近視眼性」(temporal myopia)と名付けてもいます。

 さらに、その原因として「将来の心配より、目前にある心配事に目を向けざるをえないほどの強いストレス状態に置かれていること」を挙げています。

 この事実は、非常に示唆に富んでいます。噛み砕いて言うと、心配や不安などが強く、ネガティブな感情にさらされているときは、先延ばしをしやすくなるということ。

 この説には、体感的に共感できる気がしませんか。先延ばしをせず「こまめにやる、早めにやる」ためには、ストレスをうまく逃がすことが大きなポイントになります。はいえ、外的な要因でストレスの渦中にある人が、それをうまくかわすことはなかなか難しいもの。ストレスを少しでも軽減できるよう、心がけてみてください。

「先延ばしをしないためには、感情のコントロールが効果的」という説も、多くあります。当たり前の話ですが、心配や不安などといった感情は、「こまめにやる、早めにやる」という姿勢を阻害しがちなのです。

 どうすれば、先延ばしグセを克服できるのか。「こまめにやる、早めにやる」人になれるのか。

 推奨したいのは「身近なところから、暮らしを改良していく」という手です。地道な努力に見えるかもしれませんが、脳に余計な負担を強いることなく、行動を確実に変えることができます。

 たとえば、よくある問題のひとつに「余計なネットサーフィンをするクセを改めたい」というものがあります。

「業務上、ネット検索(SNS活動)が必要」というわけではないのに、なんとなくダラダラとネットを見てしまうという人は多いはず。私たちの生活を飛躍的に便利に楽しくしてくれたはずのネットが、先延ばしグセの一因となっているわけです。

 もちろん、一部の研究者たちはこのような時代の流れを敏感にキャッチしています。前回に紹介したピアーズ・スティール教授の研究チームは、ソフトウェア開発企業と協力して「先延ばしグセ」に対処するための研究を行ってきたことでも知られています。たとえば、北京に拠点を置く企業セイント(Saent)と共同で、“本業”のパソコン作業から脱線しない仕組みが盛り込まれたソフトウェアを開発した実績もあります。

 セイントの製品は、日本でもネット通販で手に入れることができます。その製品とは、ひとことで言うと生産性を上げるためのデバイス。デスク上に置いたデバイスに触れると、設定した作業時間(30分、50分、90分)の間は、SNSなどを使えなくなります。つまりバーチャルな監禁状態になるというわけです。“監禁”が解けるとデバイスが光り、元の状態に戻ります。

 セイントは、「オンライン上でマルチタスクを効率的にこなせるのは、ネットユーザーのわずか3%程度」としています。圧倒的大多数が、本業と関係のないサイトをフラフラうろつき、大事なことを先延ばしする「タスク・スイッチャー」だというわけです。

 このようなソフトやデバイスなどの力を借り、自分のパソコン環境を「こまめにやる、早めにやる」仕様に最適化していくことは、非常に有益です。

※『すぐやる脳』(サンマーク出版)より一部抜粋して再構成

【プロフィール】

菅原道仁(すがわら・みちひと)/脳神経外科医。1970年生まれ。杏林大学医学部卒業後、クモ膜下出血や脳梗塞などの緊急脳疾患を専門として国立国際医療研究センターに勤務。2000年、救急から在宅まで一貫した医療を提供できる医療システムの構築を目指し、脳神経外科専門の八王子市・北原国際病院に15年間勤務し、日々緊急対応に明け暮れる。その後、2015年6月に菅原脳神経外科クリニック(東京都八王子市)、2019年10月に菅原クリニック 東京脳ドック(港区・赤坂)を開院。著書に『そのお金のムダづかい、やめられます』(文響社)、『成功する人は心配性』(かんき出版)、『成功の食事法』(ポプラ社)などがある。