JAL、純利益39.4%減139億円 鳥取社長「人件費は投資」=24年4-6月期

AI要約

日本航空(JAL/JL、9201)の2024年4-6月期連結決算は、純利益が前年比39.4%減の139億8400万円となり、2025年3月期の通期業績目標は1000億円を計画。

決算会見では新社長が安全対策や機材更新に意欲を示し、人件費増加については「投資」と位置付けている。

売上収益は増収となり、LCC事業も黒字化した。また、為替や航空需要の動向にも言及し、円高に期待を寄せている。

JAL、純利益39.4%減139億円 鳥取社長「人件費は投資」=24年4-6月期

 日本航空(JAL/JL、9201)が7月31日に発表した2024年4-6月期(25年3月期第1四半期)連結決算(IFRS)は、純利益が前年同期比39.4%減の139億8400万円だった。2025年3月期の通期連結業績予想は据え置き、純利益は前期(24年3月期)比4.7%増の1000億円を目指す。

 決算会見には、今年4月に就任した鳥取三津子社長が出席。「第1四半期の計画を達成し、順調なスタートを切ることができた。一方で、安全上のトラブルが相次いだことで、5月27日に国土交通省から厳重注意を受け、6月11日に再発防止策を提出した。私が先頭に立ち、全社員が一丸となって安全を守り抜く」と決意を述べた。

 また、13機発注済みで今年度内に8機を受領予定の新機材エアバスA350-1000型機については「4号機を今週受領する」とし、長距離国際線機材の更新を計画通り進めていく。

◆「人件費は費用ではなく投資」

 4-6月期の売上収益は11.2%増の4240億6500万円、本業のもうけを示すEBIT(財務・法人所得税前利益)は29.5%減の221億2300万円と、増収減益となった。

 鳥取社長は「売上収益は、各事業セグメントも前年度対比で増収となり、第1四半期として再上場後の最高額を達成した。費用は燃油為替市況の影響や、人的資本投資により前年度対比で増加したが、EBITは当初計画を達成した」と4-6月期を振り返った。

 人件費の増加について、鳥取社長は「ベースアップや賞与と、ずっとできなかった採用により人数が増えた」と説明。「(人件費は)費用ではなく、投資と考えている」と、安定的な人材確保に不可欠な投資との考えを示し、「状況を見ながら(人材への投資を)積極的に実施していきたい」と述べた。

◆国際線日本発は4割

 売上収益のうち、JALを中核とするFSC(フルサービス航空会社)事業が8.3%増の3337億円。このうち、国際旅客収入が12.5%増の1659億円、国内旅客収入が2.2%増の1247億円、貨物郵便事業が13.0%増の388億円だった。

 国際線は、旺盛なインバウンド(訪日)需要や日本発のビジネス需要が回復傾向にあることで旅客数が11.4%増となり、単価は1.0%上昇した。一方、国内線は団体客の減少で6.6%減となったものの、単価は9.5%上昇となり、旅客収入の落ち込みを抑えた。

 国際貨物は、2月からボーイング767-300BCF貨物機の運航を開始してEC需要を取り込み、国内貨物はヤマトホールディングス(9064)とJALグループの協業となるエアバスA321ceo P2F型貨物機が4月に就航し、増収につながった。

 国際線旅客の構成比率について、グループCFO(最高財務責任者)の斎藤祐二副社長は「日本発が4割、海外が6割。このうち乗り継ぎ客は2割弱程度で、中国は今までも多く取っていなかったので、構成は大きく変わっていない」と、海外の航空会社による米中間の直行便再開はあまり影響を受けていないという。

 ZIPAIR(ジップエア、TZP/ZG)を中核とするLCC(低コスト航空会社)事業は、旅客収入が57.2%増の209億円で、第1四半期としてEBITが初めて黒字となった。このうち、中長距離LCCのZIPAIRは旅客収入が49.2%増の172億円、中国を中心とするスプリング・ジャパン(旧春秋航空日本、SJO/IJ)は2.2倍の37億円となった。。

◆「もう少し円高に振れると非常にありがたい」

 為替の実績は1米ドル153.7円で、燃油はシンガポールケロシンが1バレル100.2米ドル、ドバイ原油が85.8米ドルとなった。

 日銀が31日に、金融政策決定会合で追加利上げを決めたことを受け、鳥取社長は「極端な円安が続いているが、燃油費などの費用やアウトバウンド需要への影響が非常に大きい。利上げで、もう少し円高に振れると非常にありがたい」と述べ、「1ドル145円で計画を立てているので、その水準に入っていけばコントロールが可能な状態になるのではないか」と語った。

◆25年3月期予想は据え置き

 2025年3月期通期の業績予想は、前々回3月21日と前回5月2日の発表から据え置いた。売上収益が1兆9300億円(24年3月期比16.8%増)、EBITが1700億円(同17.1%増)、純利益は1000億円(同4.7%増)を見込む。配当は中間と期末が1株40円ずつ、年間で同80円(配当性向35.0%)となる見通し。

 売上収益は、単価上昇による国内旅客収入の増加や、日本発需要の回復による国際旅客収入の増加を見込む。営業費用は、円安や物価高に加えてベースアップなどの人材投資により、2024年3月期実績から2327億円(15.1%)増の1兆7750億円を見込んでいる。