住宅ローン金利が3年余りで3倍に 日本の先を行くスウェーデンの金利政策の変化とは

AI要約

長く続いた「マイナス金利」「ゼロ金利」から脱し、利上げに転じたスウェーデンの影響について。

住宅ローン金利の急激な上昇が市民の生活に及ぼす影響。

住宅ローン金利上昇による家計への負担や生活変化、対応策について。

住宅ローン金利が3年余りで3倍に 日本の先を行くスウェーデンの金利政策の変化とは

日本の先をいく国がある。長く続いた「マイナス金利」「ゼロ金利」から脱し、利上げに転じたスウェーデンだ。久しぶりに迎えた「金利がある世界」で、市民の暮らしはどう変わっているのか。(藤崎麻里=GLOBE編集部記者)

ストックホルム中心部から南に電車で約25分の新興住宅街。夏のような日差しが注ぐ5月下旬、駅から10分ほど歩くと、緑を望む低層のアパート群があった。3階建てのアパートに住むIT関係会社勤務のエリノール・ムーレさん(42)は、住宅ローンの返済額が急に増えたことに驚いた。2020年11月、この一室を245万クローナ(約3700万円)で買ったときに組んだ住宅ローンの変動金利は1.6%程度だったが、今年3月に約3倍の4.95%にはね上がり、5月もそれが続いていた。

彼女は2022年12月末に長男を生み、一人で育てている。今ではおもちゃやベビーチェアもある部屋を見回しながら言った。「住宅ローンを借りた当初、『今は金利が低い』とは思っていたが、まさかこんなに上がるとは」

2015年2月に「マイナス金利」を導入したスウェーデンの中央銀行は、2019年12月に政策金利を0%にするまでそれを続けた。2022年4月には0.25%に引き上げ、その後7月から連続7回の利上げで政策金利を4%まで高めた。政策金利は民間銀行が貸し出す企業向け融資や住宅ローンの金利に影響を与える。住宅ローンの金利が上がれば返済額が増え、家計に響く。

2022年4月のゼロ金利解除の少し前、ムーレさんは「近く利上げが行われ住宅ローンの金利も上がる」と聞くようになった。銀行と相談し、住宅ローンの金利を1.6%で2年間固定してもらった。固定金利は、変動より高い利率になることが一般的だが、その時点での変動金利の利率で固定してもらうことができたのだ。だが、その固定期間が終わり、今年3月から金利が跳ね上がったため、返済の負担がのしかかった。

月々の給与は4万クローナ(約61万円)。その3割程度を住宅ローンの支払いに充ててきたが、今では5割を超える。ならば生活費を抑えるしかない。インフレで食費もかさむなか、最近では、肉は買わず、新鮮な野菜も控えて安い冷凍野菜を使っている。動画配信サービスの契約も見直した。かつて当たり前だった海外旅行には行かない。

住宅ローンの金利が上がり始めた2022年前半は、妊娠期。返済額の上がり方にストレスを感じ、出産後により安くローンが組める家に引っ越せないか、銀行に相談に行った。だが、金利が上がっていくなかでは難しい。

アパートを買ったときより少し高い250万クローナで売って、今年6月中旬に新しいアパートに引っ越すことにし、そこを担保に住宅ローンを組んだ。2LDKから1LDKに狭くなるが、実家にも近く子育てしやすい地域なので決断した。ムーレさんは「利上げがとても急激だったから人々の暮らしに大きく影響した」とため息をついた。「でもましになってきているし、もう少しでよくなるでしょう」