中国は不動産バブル崩壊で「未完成ビル」と「売れ残り住宅」の山→政府当局が打ち出した“支援策”の裏にひそむ「重大な懸念点」【現地駐在員が解説】

AI要約

2019年ころから始まった「中国不動産バブルの崩壊」は、2024年に入っても深刻化しており、政府当局は販売不振や在庫増加に対処するために対策を講じている。最新の支援策には買い上げ支援や住宅ローンの頭金比率引き下げ、金利の下限廃止が含まれている。

4月30日の中国共産党の中央政治局会議では不動産市場についての取り組み方針が示され、中国人民銀行も市場支援策を打ち出すこととなった。需要喚起や供給最適化を目指して取り組まれている。

新たな支援策によって、国有商業銀行への再融資や低所得層向けの保障性住宅への転換が進められるなど、不動産市場の再建を図る姿勢が見られる。

中国は不動産バブル崩壊で「未完成ビル」と「売れ残り住宅」の山→政府当局が打ち出した“支援策”の裏にひそむ「重大な懸念点」【現地駐在員が解説】

2019年ころから始まった「中国不動産バブルの崩壊」は、2024年に入ったいまもなお深刻化しているといいます。いったいこの状況はいつまで続くのか、追い込まれた中国政府当局の打開策とは……東洋証券の上海駐在員事務所で所長を務める奥山要一郎氏が詳しく解説します。

先日訪れた貴州省。省都の貴陽郊外で見かけたのは「爤尾楼(ランウェイロウ)」と呼ばれる無数の未完成ビルだった。建物の体を成しているものの、コンクリートがむき出しで、ふきっ晒しの窓枠が虚しい。マンションになるはずだった構造物が中途半端な状態で放置されている。これはいったい……。

中国で不動産の販売不振や在庫増加が社会問題化して久しい。政府当局は需要喚起や販売促進策を相次いで打ち出し、局面を打開しようとしている。

4月30日開催の中国共産党の中央政治局会議では、不動産市場について「在庫の消化と供給の最適化に向けた措置を研究する必要がある」と強調された。これを受け、中国人民銀行(中央銀行)が5月17日に市場支援策を公表。

(1)売れ残り住宅の買い上げ支援

(2)住宅ローンの頭金比率の引き下げ

(3)住宅ローン金利の下限廃止

の3点が中心となる。

(1)の買い上げ支援は、中国人民銀行による国有商業銀行など向けの再融資3,000億元が“原資”となる(実質的に5,000億元規模となる見通し)。

そして銀行から融資を受けた地方国有企業が合理的な価格で住宅を買い取り、低・中所得層向けの保障性住宅に転換する方針だ。何立峰副首相は「経営難に直面する不動産デベロッパーの難局を助ける」と強調。「国による開発業者の救済策」と捉えられよう。

(2)は、住宅ローン金利の最低頭金比率を1軒目購入時で20→15%、2軒目で30→25%に引き下げる。23年9月に続く措置で、購入ハードルを低くした。

(3)の住宅ローン金利は、これまでの「1軒目は5年物ローンプライムレート(LPR)より0.2%低い水準」「2軒目は5年物LPRより0.2%高い水準」という規定を廃止する(5年物LPRは足元で3.95%)。

これについて中国人民銀行は、「商業銀行は顧客のリスク状況に応じて自主的に金利水準を決定することができ、住宅ローン金利の市場化が実現する」とした。