2024年度の「賃上げ」率 最多は「5%以上6%未満」 実施率は84.2%、中小企業は「賃上げ疲れ」も

AI要約

2024年度の賃上げ実施率は84.2%で、2年連続でコロナ禍前の水準を超えた。

大企業は賃上げを継続しており、ベースアップの割合が初めて6割台に達した。

中小企業では賃上げ実施率が低下し、賃上げへの息切れが顕在化している。

2024年度の「賃上げ」率 最多は「5%以上6%未満」 実施率は84.2%、中小企業は「賃上げ疲れ」も

 2024年度の賃上げ(実施を含む)は、84.2%の企業が実施した。定期集計を開始した2016年度以降、最大だった2023年度の84.8%には0.6ポイント届かなかったが、2年連続でコロナ禍前の水準を超えた。物価高やコロナ禍からの企業業績の回復を背景に、高い賃上げ率で推移している。

 ただ、規模別の実施率は、大企業が94.0%と前年度から4.1ポイント上昇した一方、中小企業は82.9%と前年度を1.3ポイント下回り、規模格差は過去最大の11.1ポイントに拡大した。大企業は賃上げを継続したが、中小企業は重い人件費負担から「賃上げ疲れ」もうかがえ、持続的な賃上げ実現の課題もみえてきた。

 賃上げ内容は、「ベースアップ」が61.4%で初の6割台に乗せた。コロナ禍以降、先行きを見通せない状況で、企業は賞与の増額で一時的な賃上げに対応する傾向にあった。だが、物価高を背景に、実質賃金マイナスが26カ月連続と過去最長を更新するなかで、徐々にベースアップによる賃上げが浸透しつつある。

 企業全体では賃上げは定着してきたが、中小企業では4年ぶりに賃上げ実施率が低下するなど、一部では賃上げへの息切れも顕在化している。2024年1-7月の「人件費高騰」倒産は60件(前年同期29件)と大幅に増え、すでに過去の年間最多も更新した。人手不足が深刻さを増すなか、安定的な賃上げ原資の確保に向け、生産性の向上と同時に適正な価格転嫁の実現も急がれる。

※本調査は、2024年8月1~13日にインターネットによるアンケートを実施し、有効回答6,899社を集計・分析した。

※賃上げ実体を把握するため「定期昇給」、「ベースアップ」、「賞与(一時金)の増額」、「新卒者の初任給の増額」、「再雇用者の賃金の増額」を賃上げと定義した。

※資本金1億円以上を「大企業」、1億円未満(個人企業等を含む)を「中小企業」と定義した。