「激しい急降下」で乗客死亡も 飛行機を襲う「晴れてるのに乱気流」世界で大問題! 乗客の“心構え”を聞いた

AI要約

晴天乱気流とは、雲がなくても突然発生する危険な気象現象で、気象レーダーでも検知できないため予測が困難。

晴天乱気流は温暖化の影響で増加し、航空機に被害を与える可能性が高まっている。

晴天乱気流に巻き込まれた場合、パイロットは操縦士報告を頼りにし、回避策を取るが完全な回避は難しい。

「激しい急降下」で乗客死亡も 飛行機を襲う「晴れてるのに乱気流」世界で大問題! 乗客の“心構え”を聞いた

 目視可能な雲がないのに発生する激しい乱気流――その名も「晴天乱気流」。気象レーダーでも感知できない上に、積乱雲や嵐を伴わないため、パイロットが目視して予測することができません。文字通り、青天の霹靂(へきれき)という状況で飛行機が巻き込まれてしまう現象が、いま世界中で問題となっています。

 例えば、直近では2024年5月21日、ロンドンからシンガポールに向かって飛んでいたシンガポール航空のボーイング777-300ER機がミャンマー上空で乱気流に巻き込まれ、3分間で1800mもの急降下。乗客が天井に頭をたたきつけられるなどして、死者1名に多数の負傷者を出しました。

 そこまで大きくはなくとも、飛行機に乗っていて、雲の中を通過しているわけでもないのに気体がガタガタと揺れた経験を持つ人もいるかもしれません。こうした晴天乱気流は温暖化の影響で増加傾向にあるといわれ、海外メディアは大騒ぎ。北大西洋上の激しい晴天乱気流は過去40年に5割増え、2050年にはさらに今の倍に増えるそうです。

 この衝撃的な試算を発表した乱気流の研究の第一人者、英レディング大学のポール・ウィリアムズ教授のもとには、シンガポール航空の事故の直後からインタビューの申し込みなどが殺到してします。1か月半近くたった7月でもスケジュールは埋まりっぱなしで、学生にメディア対応させるほどの多忙ぶりだと同教授は取材に語りました。

 では、こうした激しい晴天乱気流に万が一入ってしまった場合、パイロットはどのように対処しているのでしょうか。

 飛行機を操縦するパイロットにとって晴天乱気流を避ける唯一の頼りの綱は、「操縦士報告」と呼ばれる、世界中の航空会社の飛行機から送られる気象情報です。つまり、自分が飛行を予定しているルートを少し前に通過した別のパイロットが「乱気流があった」などと報告した情報です。これを参考にして避けるべき場所などを決めます。

 ただ、これでも晴天乱気流を避けきれないのが恐ろしいところです。大手航空会社に計26年間勤務し、事故にあったシンガポール航空の機体とまったく同じボーイング777-300ER機も長年操縦してきたダグラス・ミッチェル氏に話を聞きました。