存在感はカニエ・ウェスト級! アバルト500e 長期テスト(1) EV特有の制限を楽しさは上回る?

AI要約

小さな電動ハッチバックが、長期テストで筆者のところにやってきた。荷物の積載量や都市部での適応性を評価し、アバルト500eの利点と欠点を挙げた。

小さな車体で都市部での移動や駐車には適しているが、長距離ドライブ時の航続距離や充電設備の不足が課題となっている。

また、人工的なエンジン音の再生機能についても触れられており、好みが分かれる内容となっている。

存在感はカニエ・ウェスト級! アバルト500e 長期テスト(1) EV特有の制限を楽しさは上回る?

小さな電動ハッチバックが、長期テストで筆者のところにやってきたのは、自宅の引っ越しの2週間前だった。同じバッテリーEVでも、フォルクスワーゲンID.バズなら、とても役立ったのに。

テールゲートとスライドドアを開き、フロアのパネルを取り外し、リアシートをフラットに畳めば、アパートにある荷物の半分近くは積めただろう。ワンボックスカーをレンタルする必要はなかった。植木鉢を倒したり、新居と何度も往復することもなかった。

アバルト500eは、シトロエン・アミなどのマイクロカーを除いて、英国で購入できるバッテリーEVとしては最小の1台。4シーターだが2ドアで、荷室も狭い。そのおかげで、パートナーと断捨離するべきか、相談する機会にはなったけれど。

もちろん、小さなクルマにも良い部分は沢山ある。説明するまでもなく、小柄なボディは都市部での暮らしに丁度いい。

アパート前の狭い駐車スペースへ余裕をもって収まり、入り組んだ路地にスルスルと入っていける。ヒースロー空港の混雑したターミナルビル付近でも、気を使う頻度は減る。

都心に住まうクルマ好きは、以前から相反することを天秤にかけてきた。車内は多少窮屈でも、扱いやすい小さなモデルにするべきか。高速道路が得意で、郊外の一般道も快適に飛ばせる、より大きいモデルにするべきか。実用性は別として。

この2つの条件を、同時に満たすモデルは多くない。しかし、アバルトの500eなら可能性はありそうだ。

サスペンションは減衰特性が良く、乗り心地は素晴らしい。小さな交差点をくるりと旋回し、キビキビと走り、市街地への通勤にぴったり。以前に、グレートブリテン島北東部のノース・ヨーク・ムーアズ国立公園へ向かった時は、素晴らしい走りも披露してくれた。

ただし500eで問題になるのが、交通量の少ない、気持ちいい道まで到達すること自体。高速道路を数10km北上するだけで、42kWhと小さい駆動用バッテリーの15%くらいを消費してしまう。

ロンドンの北に広がるドライブルートを目指す場合、向かった先での充電を考慮する必要がある。急速充電能力は85kWで、最近のモデルとしては速いといえず、待ち時間も短くない。これからの長期テストの、足を引っ張りそうなことの1つといえる。

そんな航続距離とは別に、初めのうちに評価しておきたい機能がある。このアバルトでは、人工的なエンジン音を再生できるのだ。運転体験の充足度を高めるため、ガソリンエンジンで走るアバルト595の排気音を模したサウンドを聞くことができる。

これは、人によって好き嫌いが明確にわかれるだろう。耳障りでうるさいと感じる人もいれば、楽しいと感じる人もいるはず。筆者は嫌いではないが、考えが変わるまでオフにすることにした。