72歳で急逝した父。生前に「財産を全てあげる」と言われていました。預金は全額「私の口座」に移しても問題ないでしょうか?

AI要約

相続には法定相続と遺言相続の2種類があり、それぞれの違いやメリットを説明。

法定相続では民法に基づき相続人が決まり、割合も定められている。遺言書がない場合は法定相続のルールが適用される。

遺言相続は遺言書によって遺産の分配が決定される方法で、相続人外への遺産分配や遺留分などの注意点がある。

72歳で急逝した父。生前に「財産を全てあげる」と言われていました。預金は全額「私の口座」に移しても問題ないでしょうか?

72歳で父が急逝してしまった人の中には、生前に「財産はすべてあなたに」と言われていた人がいるかもしれません。このことから、銀行にある父の貯金を自分の口座へ移動して問題ないか気になる人もいるでしょう。

今回は父の貯金を自分の口座へ移動する行為が問題ないかとあわせて、起こりうるトラブルや相続の種類についてまとめました。

遺産の相続方法は「法定相続」と「遺言相続」の2種類があるようです。それぞれどのような内容なのかを、詳しく見ていきましょう。

■法定相続

法定相続とは、民法に定められた相続人の範囲や順位にのっとって相続を進めることです。民法によって定められた相続人を「法定相続人」と呼び、亡くなった人の配偶者と一定の血縁関係がある人が該当します。

なお、法定相続の場合は、どのくらいの割合で相続するかも定められていることが特徴です。相続人同士の遺産分割の話し合いで合意が取れなかった場合は、表1の割合で相続されることも覚えておきましょう。

表1

出典:政府広報オンライン「知っておきたい相続の基本。大切な財産をスムーズに引き継ぐには?【基礎編】」を基に筆者作成

遺言書がない限りは法定相続のルールが適用されます。そのため、今回のケースで遺言書に相当するものがなく、配偶者(一人娘の母)がいる場合は、残された遺産は半分ずつ分配されると考えられるでしょう。

■遺言相続

遺言相続は、亡くなった人(被相続人)が生前に作成した遺言書の内容に沿って遺産を分配する方法です。法定相続のルールでは不利益が生じる場合などに用いられる方法となっており、以下のようなメリットがあると考えられています。

・本来相続人に該当しない人に遺産を分けられる(内縁関係や血縁関係にない人・団体など)

・特定の遺産を特定の相続人に相続させられる

・自分の意思で遺産の分配を決められる

・相続人同士の争いを避けられる

なお、遺言書の種類は「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」の2種類に分類されます。

遺言相続で注意したい点として、相続には「遺留分」と呼ばれる、法定相続人が相続分を請求できる権利があることがあげられます。今回のケースでいうと「財産はすべてあなたに」と記載があっても、法定相続人は裁判所で遺留分の請求が可能です。

たとえば自身の母が存命の場合、遺言書で金額が指定されていたとしても、全額受け取れない可能性がある点は覚えておきましょう。