英国記者が暴いた「文化大革命のトラウマ」

AI要約

中国の文化大革命に焦点を当てた『記憶の葬礼』は、200万人の死者や数千万人の投獄など、悲劇的な出来事が鮮明に描かれている。

著者は北京での滞在中、文化大革命によって残されたトラウマについて多くの人々と会い、探っていく姿が描かれている。

一方で、著者は文化大革命が中国社会に与えた影響や、現代社会における民主主義の重要性についても考察している。

英国記者が暴いた「文化大革命のトラウマ」

【新刊】タニア・ブレイガン著、パク・ミンヒ訳『記憶の葬礼』(マルコポーロ刊)

 「文化大革命を理解せずに、こんにちの中国を理解することは不可能だ」

 文化大革命(1966-76)の時期、実に200万人が政治的理由で命を失い、数千万人が投獄された。しかし中国で、この時期の記憶は空所のように置き去りになっている。国の弾圧と個人的トラウマが絡み合って「国家的記憶喪失」をもたらしたのだ。

 英国ガーディアン紙の中国特派員として7年間北京に滞在した著者が、沈黙の中で数世代にわたって続くトラウマを手繰っていった。著者には気掛かりがあった。「数億人が、自分たちに甚大な影響を及ぼす、人生の10年間を無視しているのは理解し得ないことに思えた」。だが、その沈黙を破ろうとする試みも少しずつ垣間見える。芸術家、財閥、工場労働者、農民、仲介業者などさまざまな人と会い、耳を傾けた。人々は数十年間隠してきた秘密の恐怖、自責、責任感などを打ち明けている。

 著者は「文化大革命が今なお、どのように中国を形成しているのか、理解したかった」と述べた。その上で、それとなく視野を拡大する。「文化大革命から遠く離れていても、一線を画すのは愚かな行為だ。民主主義は完全体ではない。こんにちの私たちにも、苦境に陥りかねない危険性は十分にある」。440ページ、2万5000ウォン(約2900円)

ファン・ジユン記者