「軍事郵便」に焦点 歴史博物館で戦争の記憶たどる展示 長野県伊那市高遠町

AI要約

長野県伊那市高遠町歴史博物館で開催されている展示では、戦前に出征した兵士たちが家族に送った手紙や軍事郵便に焦点を当てている。

展示では、軍事郵便を通じて戦時下の厳しい情報統制の様子や兵士と家族の交流がうかがえる。収集された手紙や写真から戦争の記憶が語られている。

訪れる人々に対し、戦争の実態を理解するために展示を通して、若い世代にも戦争体験者の感情や家族の喜びを伝えようとしている。

「軍事郵便」に焦点 歴史博物館で戦争の記憶たどる展示 長野県伊那市高遠町

 戦前、出征した兵士たちが故郷の家族らにしたためた手紙など「軍事郵便」に焦点を当てた展示が長野県伊那市高遠町歴史博物館(同市高遠町)で開かれている。「軍事郵便でたどる戦争の記憶」と題し、同市出身者の遺族らが提供した手紙などを複数点紹介。戦場という過酷な境遇でも大切な人を気遣う心情が読み取れる一方、内容を確認する検閲も行われていて、戦時下の厳しい情報統制の様子を伝えている。25日まで。

 同館は市民に寄せてもらった「出征兵士と家族の肖像」の写真を終戦記念日の時期に合わせて展示していて9年目になる。今回は関連の収集物から軍事郵便を題材の中心に選択。軍事郵便は検閲に引っかからないよう工夫が施され、当時を考える上で貴重な品という。

 展示では伊那里村杉島(現伊那市長谷)出身で、中国大陸に出征した故伊東知朗さんの手紙を紹介。1919(大正8)年生まれの伊東さんは40年に召集され、軍事作戦などに参加したという。

 手紙は40年の夏から翌年2月頃に掛けて家族に送られたもの。気候の厳しさや母親への感謝に加え、元気でいることを伝えてほしいという内容もあった。ある時はペンをなくしたので送ってほしいと頼み、別の手紙でペンが届いたことを報告していた。

 軍事郵便は表書きに朱書きで「軍事郵便」と記され、41年には検閲済みの印が必要になるなど検閲が強化されていった。伊東さんの手紙でも具体的な地名は自主的に伏字で表記していて、検閲を意識して書いていたことが考えられるという。

 同館は「手紙を通して生存を喜ぶ家族の様子がうかがえる」と兵士と家族の交流を指摘。戦争経験者が少なくなった現状に触れ「自分から動かないと戦争のことは分かりにくい。若い世代には足を運んでみてほしい」としている。

 入館は午前9時~午後5時(最終は4時30分)。一般400円、高校生以下と18歳未満無料。13、19日は休館。