大好きなヒーローショーが「30年続くトラウマ」に…子供の人生を台無しにした「母親の何気ない一言」

AI要約

子どものトラウマが親の言動によることがあることを警鐘したエピソード。

30年前の遊園地での一言が、子どもの心に長い影を落とすことがあることを示唆。

カウンセリングを通じて、子ども時代のトラウマを持つ人がいることを示唆。

子育てではどんなことに気をつけるべきか。公認心理師の柳川由美子さんは「親からの何気ない一言が子どものトラウマになることは多い。親の価値観や期待を無意識に押しつけていないか考えてみてほしい」という――。

■遊園地の「最悪の思い出」

 「なんで手も挙げられないのっ! 他の男の子はみんな元気よく挙げていたのに。そんなふうじゃ小学校で苦労するわよ」

 母に叱られたのは、Aさんが幼稚園年長の時のことでした。その日はAさんの誕生日。遊園地で開催されたヒーローショーに親子で来ていました。毎週日曜日の朝、楽しみに見ている戦隊モノです。

 “事件”が起こったのはショーの終盤。戦隊ヒーローが「誰かステージの上でボクたちを手伝ってくれないかな?」と声をかけると、会場の子どもたちは「やりたい!」と元気よく手を挙げました。母は「ほら、あなたも挙げなさいよ」と言ってきましたが、引っ込み思案のAさんにはできません。

 たくさんの子が手を挙げたため、「じゃあ、今月、お誕生日の子にお願いしよう」と戦隊ヒーローが会場を見渡します。母はさっき以上に強く言ってきましたが、Aさんはどうしても手が挙げられませんでした。結局、他の子が選ばれてショーは終了。母から冒頭の言葉を投げつけられたのでした。

■Aさんがカウンセリングに訪れた理由

 それから30年余り。30代の会社員になったAさんは、「10年以上服用している抗うつ薬をやめたい」と私のクリニックを訪れました。最初のカウンセリングで「子どもの頃のトラウマ」として話してくれたのがヒーローショーのエピソードです。

 「母に怒鳴られている私を他の子が不思議そうに見ていて、それが恥ずかしかったことはよく覚えています。でも、あの後、誕生日をどんなふうに過ごしたのか、記憶がないんです」

 私は初回のカウンセリングの際、まずは自由に話してもらったあと、改めて次の7つの質問をします。

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①何が問題なのか

②なぜ、それが問題なのか

③それはいつからか

④最も悪かったのはいつか。もし最悪の時期より今がいいのであれば、何が変わったのか

⑤誰のせいでその問題は起きたか

⑥その問題のせいで、日常生活にどのような支障が出ているか

⑦では、その問題に対して本当はどうしたいか

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 初めは「薬をやめられないこと」が問題だと話していたAさん。しかし、7つの質問に答えていくうちに、本当の問題は「自分を出せないでいるため、疲れてしまうこと」だと気づいたようでした。