相手を「すぐに許さない」ほうが「8倍健康的な前進ができるかもしれない」理由とは?

AI要約

許すことが救いではない場合もある。トラウマや被害を考えると無理に許す必要はない。

自身の心の治癒やトラウマの克服を優先し、相手の謝罪を待つのも一つの方法だと専門家は述べている。

相手がなぜ行動したのか理解することが、より効果的な許しに繋がる可能性がある。

相手を「すぐに許さない」ほうが「8倍健康的な前進ができるかもしれない」理由とは?

「許すことで救われる」とあらゆる角度から説く書籍、コーチング、TEDトーク、サービスなどが存在する。

この「許しの産業」には一定のニーズがあり続けている。だが、本当に「許す」だけで人は救われるのだろうか?

この分野を10年以上研究する米国の心理学者のラマニ・ダーバスラは、米紙「ワシントン・ポスト」にこう寄稿している。

「たしかに、些細なことに対して恨みを抱き続けるのは不健康かもしれないが、あまりにすぐ人を許すことは、その人にとって有害になることが多い。トラウマに関しては特に」

「時には許さないほうが、前に進むためにあなたを力づけることもある」

また、「許さない人は、冷酷、頑固、または融通が利かない人として描かれることがあるが、それは被害を与えた加害者ではなく、被害を受けた人を病理化している」と指摘している。

彼女は「許すこと」が最善の選択ではない可能性があるいくつかの状況を挙げている。

「母親の同性愛嫌悪の発言に恐怖を感じ、家を出た」というあるゲイの男性の決断について、精神医学の専門家は「ありのままの自分が不当に迫害されるような環境に身を置く必要は決してない」と述べている。

「自分を守り、正しい境界線を守ることは、心の健康にとって不可欠です」

彼はのちに母親にカミングアウトし、母親が完全に彼を受け入れられるようになるまで、距離を置いていたという。

ある男性は、妻と2人の息子を殺害した飲酒運転者が投獄されたあと、裁判所に対し、その飲酒運転者の運転免許証を永久に剥奪するよう求めた。彼は裁判官がその要求に同意するのを待ってから、加害者を公に許した。

専門家は、「許す準備ができていない場合」は、無理に許すことを急ぐべきではないと同紙に述べている。それよりも自身の心の治癒、特にトラウマの治癒を優先することを推奨している。

さらに、相手に謝罪を求めたり、その謝罪を待つのもありだという。

たとえば、幼い頃にアルコール依存症の母親と疎遠になってしまったある女子学生は、「母親は家族を見捨てた」と思い、ずっと母親を許せずにいた。だが約10年後にフェイスブックを通じてメールのやりとりを始め、のちに電話で会話をしたところ、母親から「ちゃんと謝る機会がなかった」「 私のアルコール依存は手に負えなくて。でもあなたを愛している。こんな風にならなければよかったと思っている」と明かされたという。

彼女は母親からの謝罪を機に「母を完全に許せるようになった」。たった一言の謝罪がどれほどの大きな効果をもたらすかには「驚いた」と述べている。

専門家らは、相手を許す決断をする前に、相手がなぜそのような行動をとったのかについての情報を得ることが、一層効果的な「許し」に繋がる可能性を示唆している。