TSMC伝説を築いた「半導体グル」、サムスンファウンドリーに投じた忠告(2)

AI要約

インテルとサムスンのファウンドリー事業の課題について、楊氏が指摘。インテルはファウンドリーにおいて成功確率が低いとし、サムスンもメモリーを強調する中でファウンドリー事業のアイデンティティを見直す必要があると述べている。

楊氏は、TSMCの成功例を挙げつつ、サムスンのファウンドリーが成功するためには従来の組織との区分を図り、新たな人材やアイデンティティを取り入れる必要があると語っている。

最後に、米国の製造業復活や韓国・台湾の半導体生態系についても言及し、国際的な協力や若い世代への教育が重要であると述べている。

◆ファウンドリー事業はメモリーと異なる…サムスンに「別のアイデンティティー」必要

中央処理装置(CPU)が強いインテルは昨年ファウンドリーを別途の事業部に分離し、2030年までにサムスンを抜いて世界2位のファウンドリーになると宣言した。米国政府はインテルに200億ドル(約3兆円)の補助金を配分した。楊氏は昨年、インテルの顧問から退いた後、「インテルのファウンドリー成功の可能性は10%未満」と診断した。

--なぜそう考えるのか。

「長く総合半導体事業(IDM)をしてきたインテルの文化と(ファウンドリーの属性は)距離がある。完全に別の人にならなければいけない。一般的にエンジニアの頭の中には『自分は技術に集中すればよく、顧客への応対は下位の職級がすることだ』という考えがある。顧客のために自分が持つ技術を変えようとはしない」

--社内の他の事業部という1次顧客がいるが。

「『内部顧客』を相手にした態度ではファウンドリーは成功しにくい。内部の顧客は礼儀を持って話すだろうが、外部の本当の客は問題が発生すれば怒鳴る」

--サムスンのファウンドリーはどうか。

「サムスンは非常に強い会社だが、依然としてIDMでありメモリーを強調する。メモリーの傘の下で暮らしながらファウンドリー事業はできない。例えばインテルはCPU以外はすべて失敗し、TSMCもファウンドリー以外はすべて失敗した。どれか一つに強いDNAを持っていれば、その他の新しいものはがん細胞のような扱いを受ける」

--サムスンのファウンドリーが成功するには。

「どうにかして(従来の組織と)区分しなければいけない。サムスンが得意なメモリーを捨てろということではない。メモリーに集中するものの、ファウンドリーは別のアイデンティティと別の人たちでしなければいけない。TSMCやUMC、米チャータードなど外部出身者を連れてくるのも一つの方法だ」

--TSMCのファウンドリーは豊富な半導体知識財産権(IP)を保有し、顧客に合わせて提供するサービスで有名だ。しかしTSMCにも草創期はあった。

「私は主に米国の顧客を担当したが、マイクロンを担当する時、我々にはとうてい顧客の注文を生産する技術がなかった。顧客にどうにかサービスを提供しなければならないため、能力がない自分たちの設計チームではなく『Artisan』と直接協力を始めた。それがTSMCの設計生態系の始まりだ」

Artisanは1991年に設立された米システム半導体のフィジカルIP会社で、TSMCは1998年に顧客にArtisanのライブラリーを無料で提供する事業モデルを発表した。その後、2004年にARMが42%のプレミアムを付けてArtisanを買収した。現在もTSMCとARMはシステム半導体IPで協力している。

--韓国は台湾の半導体生態系をうらやましく思っている。

「顧客のために始めたR&D生態系が27年間一歩ずつ成長しただけだ。大企業が中心の韓国とは違い、台湾は小さな企業で形成されているため、生態系の発展に有利だ。サムスン電子が生態系を構築しようと多くの資金を投入していることを知っている。ただ、より多くの小企業がビジネスをできる環境と文化を形成しなければいけない」”

◆インテルのファウンドリー成功確率10%…米国の製造業復活は容易でない

--生態系の構築に助言があれば。

「サムスンがよくやったのは半導体装備会社『セメス』を育てたことだ。しかしサムスンは設計生態系を開発しなかった。今この分野の技術はTSMCが主導するが、サムスンはひとまず従来の生態系で協力しなければならず、後に技術的な突破口が必要だ。生態系戦略は2つある。放棄するか、時間をかけるかだ」

現在グローバルAI半導体は「エヌビディア(設計)+TSMC(ファウンドリー)+SKハイニックス(メモリー)」組合が主導している。同時に、米国が設計し、東アジアがメモリーと製造を引き受け、米国が利潤の大半を握った従来の構造が揺らいでいる。

--現在、構図に変化はあるだろうか。

「かつて米国は半導体製造を意図的に国外に移した。米国人が望まない仕事だからだ。いま米国の若い世代も半導体を古い旧式産業と考えているので(米国内の製造は)容易ではない」

--韓国や台湾は何ができるのか。

「米国が主導する革新の初期パートナーとして参加しなければいけない。米国で生まれた台湾人、米国で生まれた韓国人を活用すれば米国市場に早く、より高い水準で進入することができる」