世界&日本経済下期総予測 TSMC熊本が年内に工場始動 深まる日本との協業 津田建二

AI要約

TSMCの熊本工場が年内に稼働予定で、日本との協業に期待している。

新工場は300ミリメートルウエハーを毎月5.5万枚処理し、自動車向けの半導体製品を生産する。

求人が増加し、日本の若年層にもTSMCへの魅力が広がっている。

世界&日本経済下期総予測 TSMC熊本が年内に工場始動 深まる日本との協業 津田建二

 TSMCは人材面や製造装置、材料など幅広い分野で日本との協業に期待し、第2工場も予定する。

◇イメージセンサーを生産

 電子機器の頭脳を担うロジック半導体で受託製造(ファウンドリー)の世界最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場がいよいよ年内に稼働する。工場を運営する日本法人JASM(ジャパン・アドバンスト・セミコンダクター・マニュファクチュアリング)にはTSMCが過半を出資し、ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)とデンソー、トヨタ自動車など日本企業も出資している。

 新工場は300ミリメートルウエハーを毎月5.5万枚処理する生産能力があり、12ナノ~40ナノメートル(ナノは10億分の1)クラスのプロセスを行う。生産品目は自動車向けが中心だ。新工場への総投資額86億ドル(約1.2兆円)のうち、日本政府は最大4760億円を助成する。

 SSSは「電子の目」としてスマートフォンのカメラなどに搭載される半導体製品のイメージセンサーを中心に生産する。スマホ向けでは世界トップシェアを握るが、車載向けでは米中の企業が過半数でSSSは15%程度。しかし、JASMとデンソー、トヨタを通じ、車載向けのシェア向上を狙う。加えて、SSSにとってセンサーの生産能力をすぐ上げたい場合、TSMCに依頼しやすくなる側面もある。

 TSMCから見れば、SSSとの共通の顧客である米アップル向けの生産を強化できるメリットがある。もし、SSSのセンサーの生産能力が低く、出荷に影響を及ぼすなら、iPhoneの心臓部となる半導体チップを生産するTSMCも、チップの生産量を減らさざるを得ない。しかし、JASMがSSSの生産能力を補填(ほてん)できれば、TSMCもアップルの影響を受けずにすむ。

◇就職先に選ぶ学生が増加

 日本では第2工場も予定され、計3400人の雇用計画がある。ビジネス用SNS(交流サイト)では関連の人材募集が連日、日本向けに出されている。待遇の良さや先端技術への魅力が日本の若年層にも刺激を与えているとみられ、京都大学大学院集積システム工学講座の橋本昌宜教授によると、学生・院生の就職先にTSMCが増えているという。日本の半導体人材の底上げにつながるだろう。