台湾・半導体産業と「トランプ発言」。株価急落も4~6月決算売り上げ過去最高のTSMCは泰然

AI要約

半導体受託生産大手のTSMCが2024年4~6月期に過去最高の売上高を記録し、増収増益を達成。

米中対立を受け、TSMCは生産拠点の分散化を進め、日本や米国、ドイツでの工場建設を計画中。

一時的な株価下落があったものの、TSMCは強い需要に支えられ堅調な業績を維持し、戦略の変更は示唆されていない。

台湾・半導体産業と「トランプ発言」。株価急落も4~6月決算売り上げ過去最高のTSMCは泰然

半導体受託生産の世界最大手、TSMC(台湾積体電路製造)の2024年4~6月期決算は、売上高が6735億台湾元(約3兆2180億円)と、四半期ベースで過去最高となった。同社が7月18日に発表した。トランプ前米大統領が、台湾に「防衛」の対価を求める、とする発言などによって同社株価が一時大きく下落。米大統領選の動向に揺れる台湾やハイテク産業の姿が浮き彫りになったが、市場の反応をよそにTSMCも台湾当局も泰然としている。その背景は……。

TSMCの発表によると、2024年4~6月期決算の同社売上高は6735億台湾元(約3兆2180億円)で前年同期比40.1%増。純利益は36.3%増の2478億台湾元(約1兆1840億円)にのぼった。人工知能(AI)向けの先端半導体の販売が好調であることが背景で、2四半期連続の増収増益となった。

そのTSMCでは米中対立を背景に生産拠点の分散化を進めており、日本で今年2月に開所した熊本第1工場は今年10~12月に量産を開始し、同県での計画に含まれる第2工場も年内に着工する予定。また米アリゾナ州でも工場建設を進めており、別にドイツでも工場建設を発表している。

しかし、米バイデン政権の半導体業界への規制強化姿勢が報じられたのに続き、11月の大統領選で返り咲きをねらうトランプ前大統領が、米ブルームバーグのインタビューに応じ、「台湾はアメリカから半導体チップビジネスのほぼ全てを奪い、莫大な富を得ている」」「台湾はアメリカに防衛費を払うべきだ」などと語ったことが16日に配信されたため、市場には警戒感が拡大。同社株価は一時、前営業日比44元(約210円)安の986元(約4710円)まで下落。台湾の代表的株価指標である加権指数では7月22日までの4営業日で6%超下落した。

その後バイデン氏の大統領選撤退が発表されたが、半導体業界への規制強化姿勢が引き継がれる可能性は依然あるため、状況に大きな変化はない。

これらはアメリカの出方ひとつで翻弄される台湾や、台湾のハイテク産業の姿を浮き彫りにしたかっこうだが、これに対し、TSMCの魏哲家董事長(会長)兼最高経営責任者(CEO)は18日の会見で、こうした地政学的状況の変化に対する姿勢を報道陣に問われ、「スマートフォンやAI関連の強い需要に支えられることを期待している」などと述べて、今後も堅調な業績が続くという見通しを示し、進行中の米アリゾナや熊本、ドイツなど海外での生産拠点の展開、拡大する戦略に変化がないことを明らかにした。