「AIブーム」で株価急伸の鴻海(ホンハイ)!それでも今後迫りくる「最悪のジレンマ」

AI要約

2024年3月以降、台湾の主要電子機器製造業の収益が増加傾向にあり、特にTSMCや鴻海などが好調である。

台湾の電子機器企業はスマホからAI関連製品に重点を移し始め、AIの急速な成長に対応している。

中国経済やスマホ市場の動向が台湾企業に影響を与えており、新たな展開が求められている。

「AIブーム」で株価急伸の鴻海(ホンハイ)!それでも今後迫りくる「最悪のジレンマ」

2024年3月以降、台湾積体電路製造(TSMC)や鴻海(ホンハイ)精密工業、パソコンの設計・開発のエイスースなど、台湾の主要電子機器製造業の収益は増加傾向にある。

特に、今年3月から6月までのTSMCの売上高は、前年同月比で約40%の伸長。収益増加のペースは、大方の株式アナリストの予想を上回った。

もともと台湾の電子機器企業はリーマンショック後、主にアップルのiPhoneの受託製造を手掛けることで大きな成長を遂げた。

主に業績を下支えしたのは、デジタル化を背景とするパソコンやスマホ需要だ。現在もTSMCは世界で唯一アップルの最先端チップ“M3”などの製造を受託し、ホンハイは傘下の中国企業がiPhoneの組み立てを担っている。

ところが最近、台湾勢はスマホからAI関連製品に重点を移し始めた。

背景にあるのはAIの急速な成長だ。大規模言語モデル(LLM)などAIの研究開発が進み、AIのトレーニングに必要なデータセンターの需要は増加した。台湾の大手電子機器企業は世界のIT先端企業などからAI関連機器の製造を相次いで委託され、収益が拡大している。

こうしたシフトは、ホンハイの株価推移からも確認できる。スマホ、特にアップルのiPhoneのヒットで成長を果たした同社だったが、2021年秋から2024年春先まで株価は横ばいだった。これはスマホ需要の飽和の影響が大きい。

コロナ禍ではiPhoneなどのITデバイス需要の盛り上がりも見られたが、あくまで一時的なものだった。小米(シャオミ)、伝音科技(トランシオン)など中国企業との価格競争も激化。2016年に買収したシャープの業績悪化も重石だっただろう。

また、中国経済の成長率の低下も台湾企業にはマイナスに働いた。

中国の不動産バブルは、2020年8月に崩壊したとの見方が強い。さらに2022年4月、中国政府は感染を抑えるために上海をロックダウンした。2023年1月に“ゼロコロナ政策”は解除されたが、不動産市況の悪化は個人消費の深刻な低迷を引き起こし、iPhoneの値下げも実施された。

足元で状況が変わるきっかけとなったのは、米オープンAIによる“チャットGPT”の公開だ。