「精麦」の老舗 健康ブームで食品事業に注力 西田精麦(八代市)【地元発・推しカンパニー】

AI要約

老舗精麦企業の取り組みや事業内容について紹介。

大手商社では難しい小口注文にも対応する牛の専用飼料の製造なども行っている。

健康ブームに注力し、食品事業の発展に力を入れる姿勢を見せる。

「精麦」の老舗 健康ブームで食品事業に注力 西田精麦(八代市)【地元発・推しカンパニー】

 大麦の外皮を削ってぬかを取る「精麦」を手がけて95年の老舗企業。焼酎の原料や穀物飼料を製造し、九州の食を支えてきた。近年は健康ブームを追い風に食品事業に注力し、一般消費者向けの売り上げ拡大を目指している。

 八代港に近い八代市新港町に工場がある。中に入ると精麦機18台が並び、機械を通った大麦の粒が少しずつ白色に磨かれていく。大麦は米より堅いが割れやすく、加工には繊細さが必要だ。皮を少しずつ削るため、精麦機が10台以上必要という。

 精麦した大麦は、九州各地の焼酎やみそ醸造会社に卸す。顧客ごとに麦の品種や精麦の度合いが異なる。担当者の吉永憲司さん(37)は「当社の大麦が商品の味を左右するという気構えで取り組んでいる」と胸を張る。

 醸造用と並ぶ事業の柱が、大麦やトウモロコシを原料とする牛の専用飼料の製造だ。畜産が盛んな九州を中心に、大手商社では難しい牧場単位の小口注文にも対応している。穀物を八代港経由で輸入し、工場で加工。九州の中心にある立地を生かして物流コストを抑えている。

 食品部門は焼酎ブームが落ち着いた2000年代以降、力を入れてきた。健康志向の高まりから食物繊維が多い大麦が注目されるようになり、成長を続けている。

 02年から販売する麦飯用の「ぷちまる君」は看板商品だ。15年に商品化した「九州大麦グラノーラ」は関東圏の高級スーパーでも取り扱われ、24年の「日本雑穀アワード」で金賞を受賞した。

 需要増に応えるため19年、10億円を投じて敷地内に新食品工場を建設。製造工程を集約し、生産効率と衛生管理能力を高めた。

 今年3月には、野菜や豆類に雑穀を加えて食べるグレインズサラダの専門店「&AttA(アンドアッタ)」をJR熊本駅ビルの大型商業施設「アミュプラザくまもと」(熊本市西区)に出店した。食品部門の西田文江さん(41)は「消費者との接点を増やして商品開発に生かしたい」と意気込む。

 創業100周年を5年後に控える。研究開発と海外事業を統括する長根寿陽部長(56)は「大学などと穀物の機能性を研究し、商品価値をさらに高めたい。市場規模が大きい海外への輸出にも挑戦したい」と夢を膨らませる。(河内正一郎)

 メモ 西田啓吾社長(41)の曽祖父で創業者の故西田清さんが、近隣農家から米麦の脱穀を請け負い1929年、旧千丁町(現八代市)で創業。戦後間もなく法人化して75年、現在地に移転した。ミャンマーやカンボジアでのハトムギ栽培支援が評価され2023年度、中小企業庁の「はばたく中小企業・小規模事業者」に選ばれた。24年4月期の売上高は80億円。従業員は107人。