北海道・釧路市「避暑」滞在者誘致、曲がり角 高齢者多く移住につながらず

AI要約

北海道釧路市は避暑を目的とした長期滞在者を誘致する取り組みを転機を迎えている。

市は、年間の長期滞在者数が12年連続で1位を獲得し、確固たる地位を築いたが、若者に照準を合わせる必要がある。

長期滞在者の誘致に成功しているものの、市の人口減少や定住化にはまだ課題が残っている。

北海道・釧路市「避暑」滞在者誘致、曲がり角 高齢者多く移住につながらず

 【釧路】避暑を目的とした長期滞在者を誘致する釧路市の取り組みが転機を迎えている。年間の長期滞在者数は12年連続1位で道内避暑地として確固たる地位を築いた。ただ、滞在者の大半は60代以上で移住につながるケースはわずか。滞在者数が伸び悩む兆しもあり、同市は若者に照準を合わせるなど戦略の見直しを迫られている。

 「夏は冷房がなくても快適で、トキシラズやホッケがおいしい。釧路をついのすみかにしたい」。4月に釧路市内に移住した大阪出身の笹島洋子さん(80)は、こう喜ぶ。7年前に夫が亡くなり夏の2カ月間を釧路で過ごすようになった。新型コロナウイルス禍で2020年からほぼ通年で滞在。冬の凍結路面にも慣れたという。

 釧路市が涼しいのは、道東沿岸で発生した海霧が陸地に流れて日光を遮り、気温の上昇が抑えられるため。全国的に記録的な猛暑となった昨夏、釧路市中心部は最高気温が30度以上の真夏日がゼロだった。

 市は、ビジネス客などを除いて4日以上過ごす人を「長期滞在者」と定義。希望者向けに物件や生活情報の紹介などを担うワンストップ窓口を市役所に設置し、図書館の利用や、65歳以上は博物館や展望台の入館料が無料になる特典カードも発行している。市や宿泊業者などでつくる「くしろ長期滞在ビジネス研究会」も首都圏などの移住フェアでPRしてきた。

 釧路市の長期滞在を研究する阪南大(大阪府)の森重昌之教授(観光ガバナンス)は「釧路の取り組みは成功例。釧路に貢献したい気持ちを持つファンを増やすことが地域の存続や活性化につながる」と評価する。

 市と釧路公立大は17年、1~12月の長期滞在者約1700人の消費による経済波及効果は約3億円と試算した。市は、現在は長期滞在者が2千人を超えていることから、経済波及効果はさらに上昇しているとみる。

 ただ、長期滞在者の9割が60代以上で、定住につながっているとはいえない。市総合政策部は「定住にまで至ったのはこれまで数人程度でレアケース」とする。住民基本台帳によると、市人口は今年6月時点で15万5593人。長期滞在者の誘致に乗り出した09年と比べると17.5%減で、23年の転出超過も1317人と直近10年で最多となっている。