【多様性社会の実現】一層の意識醸成が必要(7月12日)

AI要約

LGBT理解増進法の施行から1年が経過し、県内自治体で性的少数者の権利を守る動きが出始めている。

増進法を背景に、同性カップルを公的に証明するパートナーシップ宣誓制度が導入され、自治体間で導入が始まっている。

民間サービスへの適用や教育・研修の必要性といった課題も浮上しており、道のりはまだまだ続く。

 多様な性を尊重する「LGBT理解増進法」の施行から、1年が経過した。県内自治体で性的少数者の権利を守る動きが出始めているが、全県的な広がりには至っていない。法の趣旨を踏まえた環境づくりを不断に進める必要があるだろう。

 増進法の施行を背景に、県内自治体には同性カップルらを公的に証明するパートナーシップ宣誓制度と、その親や子の家族関係を認めるファミリーシップ宣誓制度を導入する事例が出ている。伊達市は59市町村のトップを切って今年1月に、南相馬市は5月、福島市は今月1日に取り入れた。富岡町も検討している。

 同性カップルらがパートナーとしての宣誓書を自治体に届け出ると、公的な証明を示す受領証やカードを受けられる。法的拘束力はないものの、提示すれば行政サービスの一部を利用できる。内容は自治体によって多少異なるが、可能になるのは公営住宅の入居申し込み、住民票や母子健康手帳の交付、結婚新生活支援事業補助金の申請、救急車への同乗などが含まれている例が多い。

 ただ、自治体が運営する施設や制度での利用に限られているのが現状で、一般住宅への入居や企業の各種制度の利用など民間サービスへの適用を望む声も上がっている。自治体から企業団体への働きかけも求められるだろう。

 県はパートナーシップ宣誓制度を今秋にも導入する方針を示している。本県以外では、30都府県が既に取り入れているか導入する予定を公表している。ジェンダー論が専門の前川直哉福島大教育推進機構准教授は「先行している地域の事例を参考に、よりよい制度を目指すべきだ」と提案する。「多様な性があることを知らず、誰かを傷つけてしまっている場合もある」と指摘し、教育や研修の必要性も訴える。子どもから一般まで、心身の成長を見据え、年齢に応じて理解を深める場を適切に設けるのが望ましいのではないか。

 LGBT理解増進法は誰もが生きづらさを感じずに暮らせる社会を実現するための基盤となる。県によるパートナーシップ宣誓制度の導入が市町村に波及するかどうかが注目される。社会全体で制度の普及を後押しする意識づくりも欠かせない。(渡部純)