夜中のジュースやアイスクリームが「夜型幼児」をつくる…日本人の母親6000人調査で判明

AI要約

幼児の健康に影響を与える可能性がある夜型生活と朝食抜きの問題について、最新の研究成果が紹介されている。

幼児期の夜食習慣やスクリーンタイムと睡眠の関係が明らかになっており、健康的な生活の重要性が強調されている。

幼児期の食行動や栄養の乱れが将来の健康や精神的状態に影響する可能性が指摘されている。

夜中のジュースやアイスクリームが「夜型幼児」をつくる…日本人の母親6000人調査で判明

 生活が「夜型」に移行して、朝起きられずに学業・活動不振に陥る児童・生徒が増加している。それが常態化して不登校となり、ひきこもるケースも多い。その遠因として注目されているのが朝食抜きの生活で、近年、幼児期の夜の食生活とも関連しているとの見方が徐々に広がっている。そんな中、「日本人幼児の睡眠行動における夜食とスクリーンタイムの関連・横断的研究」が国際的なオープンアクセスの論文雑誌「CHILDREN」9月4日号にアップされ話題になっている。報告は日本の時間栄養学研究の第一人者で、早稲田大学名誉教授にして愛国学園短期大学特任教授である柴田重信氏らの研究チームによって行われた。柴田教授に詳しく聞いた。

■体内時計を乱し健康を損なう

 人間を含む動物は、太陽光と食事の刺激で体内時計を「24時間」にリセットしている。睡眠不足や摂食障害などの生活習慣の乱れは体内時計のリズムを狂わせ、社会的健康問題に直結していることがわかっている。

「今回の研究では幼児の睡眠と夜食の習慣を軸にクロノタイプ(昼型か夜型か)、社会的時差ボケ(体内時計と実際の時間とのずれによる不快感)、およびスクリーンタイム(テレビ、コンピューター、スマホなどの画面を見るのに費やした時間)などの関係について調査しました」

 研究対象は3~8歳の子供の母親6177人(男の子3089人、女の子3088人)。子供の性別、年齢、身長、体重の基本情報のほか、睡眠については、平日起床時間と目覚ましアラームの利用の有無、目覚ましアラームを使用しない週末・休日・平日の入眠時間などを調べた。

 夜食については「日本の幼児の間食習慣に関する調査」で上位にランクインした12種類(ジュース、アイスクリーム、チョコレート、せんべい、果物、フライドポテト、キャンディー、プリン・ゼリーなど)を選定。夜食の種類と睡眠時間や質との関係を調査したという。

「結果は、夜食の習慣のある幼児は、そうでない幼児に比べて就寝・起床ともに遅く、睡眠時間が遅いことがわかった。また、睡眠時間が遅い子供は、スナックとしてジュースやアイスクリームなど砂糖入り飲料を選択する可能性が高く、それらを頻繁に消費する傾向にあることがわかりました」

 なぜ、ジュースやアイスクリームなど糖質の多い夜間のおやつが問題なのか?

「高血糖、高脂肪の夜食は、翌日の朝食による体内時計のリセット力を弱めてしまうからです。それは子供の夜行性習慣の一因となり、概日リズムを乱す可能性があります」

 研究ではほかにも夜におやつを取ると就寝時間までのスクリーンタイムが長くなる傾向と関連していることなども明らかにした。

「つまり、幼児を夜型にしないためには夕食後の間食をやめ、スクリーンタイムを規制することが重要です。とくにジュースとアイスクリームなどの高糖質・高脂肪食には注意が必要です」

■小学生の7.8%が抑うつ状態

 そもそも夜型という概日リズムの乱れは、肥満、糖尿病、慢性腎症などの疾患のリスクを上げる可能性があることがわかっている。また、幼児期では神経発達や認知機能に影響を与える可能性が指摘されている。

 例えば5歳時を対象とした実験では、不規則な生活習慣を持つ子供は、規則正しい子供に比べて正確な三角形を描けない可能性が6倍高く、睡眠不足が認知機能の遅延と関係していると示唆されている。睡眠不足の原因はさまざまで、塾、スマホ、ゲーム、さらには新型コロナなどの感染症の影響などが挙げられているが、論文が指摘する「幼児期の夜のおやつ習慣」との関係はないのだろうか。

「今回の論文だけでそうだと言い切ることはできませんが、可能性のひとつとしては考えられるのではないか。最近は先述したように幼児期の食行動や栄養の乱れが目につき、それらが、成人期の健康に影響を与えることが各種の研究で明らかになっています」

 例えば、出生時の体重が少ないまま、不適切な食事が続いて小児期の栄養不良が続くと、糖尿病や高血圧などの生活習慣病になるリスクが高くなったり、知的能力に影響が出ることが報告されている。

 最近の欧米の調査では、児童の約5~8%にうつ病が見られ、年齢が高くなるにつれて増えるという報告がある。

 日本でも小学生の7.8%、中学生の22.8%が何らかの抑うつ状態にあるという調査結果がある。

 その一方で、22時以降に就寝する小学生の割合が増加していて「小学生白書Web版」(学研教育総研.2018年9月調査)によると、小4で42.5%、小5で51.5%、小6で63.0%に上ることがわかっている。

 こうしたうつ病の増加や就寝時間の遅れは幼児期の食行動の乱れが関係していてもおかしくない。

 わが子を健全に育てたければ、幼児の頃から糖質の多い夜のおやつを避けた方が賢明のようだ。