「蕁麻疹」は治る病気…良くならない人がチェックすべきこと

AI要約

蕁麻疹の治療には新薬が登場し、重症患者でも8~9割が改善する可能性がある。

抗ヒスタミン薬の正しい飲み方や段階的な治療法が重要であり、徐々に薬の量を減らしていくことが治療の鍵となる。

蕁麻疹は時間がかかるが、適切な治療を続けることで、治癒する可能性がある。

「蕁麻疹」は治る病気…良くならない人がチェックすべきこと

■新薬なら重症例でも8~9割が改善

 蕁麻疹は治らない、かゆみを耐えるしかないと思っていないだろうか? しかし、治療を変えれば劇的な変化を得られるかもしれない。

 日大板橋病院皮膚科の葉山惟大科長のもとには、「治療を受けても蕁麻疹が良くならない」という患者が遠方からもやって来る。

「近年、新たなメカニズムの蕁麻疹の薬が登場し、重症患者でも8~9割の方に効果が見られたとの研究結果もあります」(葉山科長=以下同)

「新たなメカニズムの薬」とは、2017年に慢性特発性蕁麻疹に保険適用となったゾレア(一般名オマリズマブ)だ。

 アレルギー症状は、免疫に関わるタンパク質の一種IgEがマスト細胞と結合することで起こる。これによりマスト細胞が活性化し、ヒスタミンなどの炎症物質が放出されるのだ。ゾレアは、IgEとマスト細胞が結合するのを阻止する。

「イタリアの後ろ向き研究では、慢性特発性蕁麻疹の重症患者470例のうち、全く効果が見られなかったのは1割。私の臨床データでも同様の結果でした。オマリズマブは月1回の注射薬ですが、コントロール良好になれば注射の間隔を空けることが可能。6週に1回、8週に1回となって、最終的にはゾレアをやめられるようになる患者さんもいます。ただ、効果が高いゆえに、『ぶり返すのが怖い』と間隔を空けてでも使い続ける方も少なくありません」

 今年2月には、新たにデュピクセント(一般名デュピルマブ)が慢性特発性蕁麻疹の薬として承認された。デュピクセントは、アレルギーに関わる炎症物質「IL-4」「IL-13」の働きを阻害する。これらの物質は蕁麻疹に深く関わると考えられている。

「承認されたばかりなので、どういう患者さんに効くのか手探り状態。現在はゾレアがメインで、ゾレアが効かなかった患者さんに対し、デュピクセントに切り替えるかを検討する」

■抗ヒスタミン薬の飲み方を間違えていないか

 蕁麻疹には、食物アレルギー、日光アレルギー、寒冷アレルギーなど特定の刺激や負荷に対して症状が出る「刺激誘発型」と、文中にも何度か出てきた「特発性蕁麻疹」がある。特発性蕁麻疹は原因不明で、蕁麻疹全体の7割を占める。この原因不明の蕁麻疹が6週間以上続く場合を、慢性特発性蕁麻疹という。

 慢性特発性蕁麻疹の治療は、段階的に行われる。前述のゾレアやデュピクセントは、ステップ3の治療。まずステップ1では、抗ヒスタミンの服用。眠気が心配になるかもしれないが、眠気が少ない第2世代を用いる。

 効果が不十分な場合、エビデンス的に主流となっているのは「抗ヒスタミンの量を増やす」。海外では4倍まで増量できるが、日本では保険適用となるのが2倍までだ。

 ステップ1の抗ヒスタミン単独で効果がなければ、ステップ2として、抗ヒスタミンにH2拮抗薬や抗ロイコトリエン薬を追加。ただし、蕁麻疹への保険適用はない。

 そしてステップ3だ。ゾレア、デュピクセントともに、ステップ1と2で効果がない場合に保険適用となる。免疫抑制剤シクロスポリン(保険適用外)、経口ステロイド薬(1カ月以内に減量または中止)もステップ3の選択肢に入る。

 念頭にしっかりと置いておきたいのは、蕁麻疹の治療の要は抗ヒスタミンであるということ。

「きちんと飲んでいない。量が少なすぎる。この2つのパターンが実によく見られます。例えばゾレアやデュピクセントの臨床試験では抗ヒスタミンと併用になるのですが、プラセボ(偽薬)群でもある程度は蕁麻疹が良くなる。それは、臨床試験中は抗ヒスタミンをきちんと飲むから。抗ヒスタミンは『症状が出たら飲む』ではなく、『(たとえ症状がなくとも)毎日適切に飲み続ける』ことが非常に重要です」

 抗ヒスタミンの毎日の服用で症状が抑制でき、一定期間継続できたら、1日当たりの薬の量を減らすか、内服の間隔を空ける。そうやって徐々に「薬ゼロ」に近づけていく。ステップ2、3も、薬の減らし方は同様だ。

「慢性特発性蕁麻疹は『治る病気』といえる。しかし時間がかかる。日本では内服薬だけの治療では治癒までに平均17.7カ月から70カ月かかると報告されています」

 蕁麻疹の薬は近い将来、非常に効果の高い新薬がまた登場するとみられている。それまで悪化させずに、今ある薬でつないでいこうではないか。