【独自】子どもの自殺、文科省調査で1000人超が計上されず 学校報告事案のみ算入、警察庁統計とずれ

AI要約

文科省の調査では小中高生の自殺事案に計上漏れがあり、報告されなかったり遺族の意向で情報が把握されなかったりしていた。

計上漏れの割合は特に小学生が高く、再発防止策に生かされない問題が浮き彫りになっている。

学校側と警察の連携が必要であり、再調査や調査手法の見直しが求められている。

【独自】子どもの自殺、文科省調査で1000人超が計上されず 学校報告事案のみ算入、警察庁統計とずれ

 子どもの自殺を巡る国の統計や調査に構造的な“計上漏れ”がある問題で、学校でのいじめの現状などを把握する文部科学省の問題行動・不登校調査の2011年度以降の結果を西日本新聞が分析したところ、小中高生の自殺事案4450件のうち千件以上が計上されていなかった。遺族の意向で学校が把握できていなかったり、自死を病死や事故死として扱ったりしたことなどが原因とみられる。

 文科省は11年度以降、児童生徒が自殺した場合は背景調査をして報告するよう学校側に求めてきた。本来調査されるべき児童生徒の死の約4分の1が宙に浮き、再発防止策に生かされなかったことになる。学校と警察の連携など、調査手法の見直しが求められる。

 文科省問題行動・不登校調査は、全国の国公私立学校を対象に毎年度実施。学校が教育委員会などを通じて提出する報告書を基に、いじめの認知件数や暴力行為の件数、不登校の生徒数などを集計している。自殺事案については「いじめ」「学業不振」など背景を分類して集計している。

 本紙が11年度以降の文科省の同調査と警察庁の自殺統計を照合すると、警察庁の統計では自ら命を絶った小中高生は4450人だったのに対し、文科省の調査結果は3422人で、1028人少なかった。警察庁の統計に計上された自殺事案のうち23.1%が文科省の調査結果には含まれていない計算になる。“計上漏れ”の割合は小学生が最も高く37.6%(47人)、次いで中学生が26.8%(344人)、高校生が21%(637人)-だった。

 文科省は11年6月、児童生徒の自殺の傾向を把握して予防に役立てるため、自死事案やその可能性がある事案の背景調査をして報告するよう全国に通知。14年には指針を改定し、事案発生後は速やかに全件調査をすることを求めていた。報告から漏れた自死事案は、背景調査をされていない可能性がある。

 文科省児童生徒課の担当者は取材に、同調査に計上された件数は「自死事案を把握した学校から報告があったもの」と説明。“報告漏れ”がある理由については「正確には答えづらい」とした上で、「警察や、子どもが自殺したことを知られたくない遺族から学校に情報が寄せられないケースもあると思う」と答えた。

 一方、学校が遺族に児童生徒の自殺を「事故死」として扱うことを提案した事実が各地で判明している。その場合は同調査に計上されないことになるが、担当者は「学校がうそをつくことはないと考えている」。

 警察庁の統計と文科省の調査結果にズレがあることは関係者の間では知られていた。担当者は「ズレが埋まるように努めてきたが、学校が把握していない事案の調査はできない」と説明。報告漏れの再調査や調査手法の見直しは否定した。

 子どもの自殺を巡っては、自死の翌年以降に学校などの調査でいじめが原因と認定された場合、警察庁の自殺統計の「いじめが原因・動機」の分類に反映させる仕組みがないことも、本紙の取材で判明していた。

 (長田健吾)

子どもの自殺問題に詳しい石田達也弁護士の話 いじめ自殺や指導死の場合、学校は児童生徒の自死について利害関係者や当事者になる可能性がある。文部科学省の問題行動・不登校調査は、そんな学校からの報告を基にしており、自殺を報告しなかったり、過少申告したりするケースは起こり得る。信用性に疑いがある調査と言える。子どもの自殺は全国的問題。自殺に限らず、子どもが亡くなった場合は全件を調査するなど、自治体と国が一体となって調査と予防の方策を考え、実施するべきだ。