〝安全運転〟で政策金利維持の日銀 追加利上げは12月会合か 米経済の「軟着陸」見極め

AI要約

日銀は20日の金融政策決定会合で政策金利を維持した。今後の焦点は米国の景気動向を注視しながら、次の金利引き上げの時期を見極める。

植田和男総裁は追加利上げに前向きな姿勢を示したが、市場の不安定な値動きには慎重に対応する姿勢を示している。

明治安田総合研究所の分析では、年内に追加利上げが可能な環境が整うと見込まれており、追加利上げの実施時期は12月がメインシナリオとして考えられている。

〝安全運転〟で政策金利維持の日銀 追加利上げは12月会合か 米経済の「軟着陸」見極め

日銀は20日の金融政策決定会合で政策金利を維持した。金融市場の急変を防ぐため安全運転を迫られた格好だ。今後の焦点は米国の景気動向を注視しながら、年内にあと2回開催される会合のどちらかで次の金利引き上げを行うかに移った。外国為替市場や株式市場では不安定な値動きが続いており、市場関係者の間では11月5日の米大統領選の結果も見届けた上で、12月会合で追加利上げに踏み切るとの見方が有力だ。

「経済・物価の見通しが実現していくならば、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくことになる」

植田和男総裁は20日の記者会見で政策判断に「時間的余裕がある」と指摘しながらも、追加利上げに前向きな姿勢も併せて示した。

19日未明には米国の中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)が、雇用情勢の悪化を警戒し通常(0・25%)の倍のペースとなる0・5%の利下げに踏み切ったばかり。日銀が利上げ、FRBは利下げと正反対の方向へ動き出したことで、ドルを売って運用面で魅力が高まる円を買う動きが進むことが予想される。

植田氏は追加利上げを決めた前回7月会合後の記者会見で利上げ継続に強い意欲を示し、円高が進行。これを引き金に8月5日の東京株式市場では史上最大の下げ幅を記録した。今回も日銀の政策運営や情報発信次第で相場が荒れる恐れがあり、「(市場を)極めて高い緊張感をもって注視する」(植田氏)と強調するなど慎重に言葉を選んだ。

日銀が今後、利上げに伴う市場の急変を回避するには、FRBの利下げ開始を受けて米国経済が景気後退懸念を脱する必要がある。また、今月27日投開票の自民党総裁選で日本の次期首相が事実上決まり、米国では11月5日に大統領選が控える。政策運営に大きな影響を与えるこうした政治日程も判断のポイントになる。

明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは「今後、市場が米国経済のソフトランディング(軟着陸)を織り込む過程で激しい変動は徐々に収まり、年内には追加利上げが可能な環境が整う」と分析。日銀による追加利上げの実施時期は「12月がメインシナリオ」と見込む。

植田氏は次の追加利上げ時期について「決まったスケジュール感があるわけではない」と指摘し、米国経済の動向を注視する考えを示した。市場が軟着陸を早期に織り込んで落ち着き取り戻せば、10月の次回会合で追加利上げが実施される可能性も残されている。(宇野貴文)