木のくずから草木染 岐阜・高山の小さな工房と高齢者施設が生み出す唯一無二のクロス

AI要約

岐阜県飛驒地域で木くずから草木染したおしゃれなクロス"IROMU"を作る取り組みが紹介されている。

木と暮らしの制作所が家具製作過程で生じた木くずを再活用し、草木染クロスを企画・製作している。

地元の高齢者向けリハビリ型デイサービス施設と協力し、地域経済や伝統工芸の支援にも取り組んでいる。

木のくずから草木染 岐阜・高山の小さな工房と高齢者施設が生み出す唯一無二のクロス

家具をつくる過程で出る木くずから草木染したおしゃれなクロス。つくるのは日本有数の木の生産地、岐阜県飛驒地域にある小さな木工房と地元の高齢者向けリハビリ型デイサービス施設だ。まわりの人たちとつながりながら、木の魅力をあますところなく伝えたい――。そんな作り手たちの思いと自然の色彩が相乗し、唯一無二の商品「IROMU(いろむ)」を生み出している。

日本のほぼ中央に位置する岐阜県北部の飛驒地域。総面積の9割以上を森林が占め、樹木の種類が豊富なことで知られる。そのため、地域では木の性質を見極め、生かす技術が育まれてきた。奈良時代には年間100人もの木工職人が都へと派遣され、彼らは「飛驒の匠」と呼ばれた。正確な技術、シンプルな美しさを追求する匠の技と心は受け継がれ、多くの工房が高品質な家具を国内外に送り出している。

草木染クロス「IROMU」を企画・製作する「木と暮らしの制作所」(以下、制作所)もそんな工房の一つだ。

制作所では、家具の製作過程で生じたおが粉を地元の畜産農家やキノコ栽培業者に譲っていた。牛の寝床やキノコの菌床になるという。ただ、制作所の松原千明さん(36)はそれだけでは物足りず、「木の魅力を伝える何かが、他にもあるんじゃないか」と考え、自身の趣味だった草木染を思いついた。

制作所ではテーブル、イス、インテリア、キッチン用品、文具……、さまざま商品を企画、製作してきた。大切にしているのは「自分たちのところにきてくれた木はすべて生かす」こと。曲がったり、穴が開いたりして、市場では価値がないとされる木材も、その「味」を生かした家具や小物を企画・製作してきた。

制作所が大切にしているもう一つは「自分たちだけで商品をつくらない」ということ。例えば、木目の美しさを生かした透漆塗り「飛驒春慶塗」の工芸士と照明インテリアをつくったり、地元の彫刻アーティストとスツールやハイトレーをつくったり。地域の伝統工芸を守り、地域経済をゆるやかに回しながら、森と木と人々の暮らしをつないでいく。そんな思いを形にしてきた。

では、草木染は誰と一緒につくろうか。そう考えていた時、松原さんは高山市のSDGs勉強会で、リハビリ型デイサービス施設「Locomoきりん」(高山市)を運営する会社スタッフの男性が「利用者の社会参加の機会をつくりたい」と話しているのを聞いた。松原さんは初対面のその男性に声をかけ、すぐに意気投合した。3年前のことだ。