“伝統の技”を父から息子へ 国家資格“染色技能士”とは 伝統技術を守るために新商品開発も“しみぬきトントン”

AI要約

福岡・古賀市にある一級染色補正の店『翔』を訪れた取材班。店主の森本隆文さんは染色技能士として40年以上の経験を持ち、着物や反物の汚れや色褪せを修正する仕事をしている。

森本さんの熟練した技術により、着物の色褪せや汚れを感覚で修正している。染料を調合し、繊細な手つきで色を付け直す作業は高い技術を要する。

日本の伝統技術である染色補正の需要は減少しており、業界全体での着物離れが進んでいる現状が厳しい。仕事も少なくなっているが、森本さんは技術を守り続けている。

“伝統の技”を父から息子へ 国家資格“染色技能士”とは 伝統技術を守るために新商品開発も“しみぬきトントン”

古くから日本の伝統を淡々と守ってきた技術。いま日々、消えつつあるその伝統技術を守るために、商品開発で新たな活路を見出す親子を取材した。

取材班が訪れたのは福岡・古賀市。県道沿いの建物の看板には“一級染色補正”と記されている。店名は『翔』。中に入ると鮮やかな色彩の着物が並べられている。「着物関係なんですが、染色の補正業をしています」と話すのは、翔の店主で一級染色技能士の森本隆文さんだ。

「染色の補正業」とは、着物や、着物に仕立てられる前の素材、反物の汚点やシミなど落としたり、日焼けなどによる色褪せた柄の修正などを行ったりする仕事のこと。この仕事ができるのは、“染色技能士”という国家資格に認定された人に限られている。この道40年以上の経験を持つ森本さんは、そのなかでも最上の“一級”を取得しているのだ。

「この部分の修正をします。色の差がはっきりと分かると思います」と森本さんが指し示したのは、着物の襟部分の日焼けによる色褪せ。色が抜けた部分だけを元の色に染め直すという作業だ。修復は染料を調合し、エアブラシを使って行う。色を作る作業は感覚で行われる。「いままでやってきた感覚のなかで『この色が最適だろう』と。見ただけで『コレだ!』と。“一発”でいきます」と森本さんは話す。

森本さんだからこそできる熟練の技。柄を潰さないよう繊細な手つきで色を付けていく。わずか3分ほどの作業だったが、日焼けによる色褪せ部分が、どこか分からないほどきれいに補正された。

こういった仕事は、いつごろからあるのか?森本さんに尋ねると江戸の末期だという。300年以上続く伝統技術で、色を付けるだけでなく、しみ抜きも得意とする。この技術を頼りに「大事な服をもう一度着たい」という依頼も少なくない。しかし「和服離れという意味合いでは、どんどん呉服店も減っていますし…」と業界としての現状は厳しいと森本さんは話す。着物の支出額の推移を見ると、30年ほど前と比べ6分の1に縮小。染色技能士への仕事も減っているのが実情だ。