一時漂流の「高速ジェット船」機関トラブルが他人事でないワケ 維持更新できる人材だいじょうぶ?

AI要約

東京と伊豆諸島を結ぶ高速ジェット船が2024年7月24日、千葉県の房総半島沖で機関故障のため一時漂流しました。航行不能に陥ったのは東海汽船の「セブンアイランド愛」で、同船は東海汽船が保有する高速ジェット船4隻の中で最古参になります。

日本では「ジェットフォイル」の通称でも知られる高速ジェット船ですが、実はこの船の開発元は造船会社ではありません。大手航空機メーカーであるアメリカのボーイング社が生みの親です。

高速ジェット船の特徴は、なんといってもそのスピードにあります。最高速力45ノット(83km/h)という、既存の船舶にない快速性を実現するため、他の船ではまず見られない特異な形状をしています。

一時漂流の「高速ジェット船」機関トラブルが他人事でないワケ 維持更新できる人材だいじょうぶ?

 東京と伊豆諸島を結ぶ高速ジェット船が2024年7月24日、千葉県の房総半島沖で機関故障のため一時漂流しました。航行不能に陥ったのは東海汽船の「セブンアイランド愛」で、同船は東海汽船が保有する高速ジェット船4隻の中で最古参になります。

 日本では「ジェットフォイル」の通称でも知られる高速ジェット船ですが、実はこの船の開発元は造船会社ではありません。大手航空機メーカーであるアメリカのボーイング社が生みの親です。

 しかも当初は軍用として開発されたのだとか。いったいどのような経緯で旅客船へと姿を変え、日本で運航するようになったのでしょうか。

 高速ジェット船の特徴は、なんといってもそのスピードにあります。最高速力45ノット(83km/h)という、既存の船舶にない快速性を実現するため、他の船ではまず見られない特異な形状をしています。

 

 主機関はガスタービンエンジンですが、これでウォータージェットポンプを駆動することで、1分間に約150tの海水を高圧力で噴射させ、高速推進を実現します。また、船体の前後にある水中翼の揚力を用い、船体を海面から浮かせるのも高速航行の秘訣です。

 いうなれば、航空機でいうところの大気の代わりに水で揚力を得ており、翼走中のジェットフォイルは、航空機ときわめて似た仕組みで航行しています。

 このスタイルから“海の飛行機”とも称されるそうで、「ジェットフォイル(Jetfoil)」という呼び名も、ジェットエンジンやウォータージェットに由来する「ジェット(Jet)」と、薄い翼を意味する「フォイル(Foil)」を組み合わせた造語です。

 その外観や構造から「水中翼船」と呼ばれることもあるジェットフォイルですが、メーカーであるボーイングでは、「ジャンボジェット」の愛称で知られる747を始めとして、737や777、787などと同じく「929」という3ケタの数字からなるモデル名を付与しています。

 研究そのものは1960年代前半から始まっていますが、当初は軍用に主眼が置かれており、1968年に最初の実用艇として沿岸パトロール用の「トゥーカムカリ」が就役すると、その快速性にNATO(北大西洋条約機構)が注目し、ミサイル艇の開発へと進みます。

 一方、ボーイングではこの技術を基に旅客船にも着手。こうして1974年に生まれたのが「ボーイング929」でした。

 日本では、佐渡汽船が1977年に導入したのが最初で、その後、川崎重工がライセンス生産契約を締結。以後は国内建造が主流になります。なお、国産艇は1989年より就航しており、1995年までに16隻が川崎重工神戸工場で建造されています。

 2024年現在、日本国内で「ボーイング929」を運航しているのは、前出の東海汽船、佐渡汽船のほかに、隠岐汽船、九州商船、九州郵船、種子屋久高速船で、その数は約20隻にもなります。

 

 建造数は、ボーイングと川崎重工、そして同じくライセンス生産契約を結んだ上海新南船廠の3企業で合わせて44隻なので、その半数近くが日本で運航されている計算になります。

 こうして見てみると、実は日本がジェットフォイル(ボーイング929)大国であることがわかるでしょう。