東京から「怪しい街」が次々と消えていく根本理由 安全・便利・快適だけで本当にいいのか?

AI要約

東京都の再開発によって怪しい街が次第に消えつつある背景を探る。

怪しい街の特徴とは、昭和の面影や独自のコミュニティー意識などが挙げられる。

怪しい街は古びた街並みだけでなく、特別な体験を求める人々を引きつける要素も持っている。

東京から「怪しい街」が次々と消えていく根本理由 安全・便利・快適だけで本当にいいのか?

 東京という都市は、急速な再開発と都市整備の波によって、かつての風情や独特の雰囲気を持つ街並みが次第に姿を消している。多くの人々にとって、都市の発展と便利さは歓迎されるべきことだが、一方で、どこか懐かしさや哀愁を感じる「怪しい街」の存在は、心の奥底で求められている。

 こうした「怪しい街」は、単に古びた街並みや治安の悪さだけでなく、その地域特有の歴史や文化、人々の営みが交錯する場所であり、独特の魅力を持っているのだ。筆者(昼間たかし、ルポライター)の考える「怪しい街」とは、次のようなものだ。

●昭和の面影を残す独特の街並みが広がる地域

 昭和の時代から変わらない古い看板や商店が立ち並び、再開発が遅れて計画的に開発された現代の街とは一線を画す風景が広がっている。特に、小さな飲み屋や専門店が密集する地域は、雑然としながらもノスタルジックな風景が広がり、独特のにぎわいを生み出している。

●戦後から高度経済成長期に形成された地域

 戦後の闇市整理の過程で、露天商の移転先として商店街が形成され、高度経済成長期の急激な人口増加によって歓楽街が出現した。こうした急激かつ無秩序な開発の結果、雑多な雰囲気が漂う地域となった。

●独自のコミュニティー意識と閉鎖性を持つ地域

 特定の職業や階級の人々が集中し、大多数を占める。多数派を前提とした店舗が集中している。その結果、閉鎖的な雰囲気があり、外部からはアクセスしにくい。ときには、ちょっとした治安の悪さもある。部外者からは「危ない街」という評価を受けがちである

●特別な体験を求める人々を引きつける要素を持つ地域

 上記三つの要素を含み、近年の新しい価値観により、日常生活の裏側や社会の隠れた側面を見たいという欲求を持つ人々が訪れることが多くなっている地域。また、本来は観光地として想定されていなかった地域である。

 これらの特徴は、必ずしもすべてが同時に当てはまる必要はない。しかし、「怪しい街」とは、単に治安の悪い地域や古い街という意味ではないことを理解しておく必要がある。

 今、東京からこうした「怪しい街」が次々と姿を消しつつある。その背景を探るのが本稿のテーマである。