空き家問題「深刻化」のウラで、新築マンション建設ラッシュが続く「日本のヤバい現実」

AI要約

将来推計人口によると、日本の人口は減少傾向にあり、それに伴い住宅市場も変化している。

住宅需要は人口減少とは直接関係なく、相続税対策需要や高齢者の動向が影響している。

このような状況下で不動産業界は需要の変化に合わせて新たなビジネスモデルを模索している。

空き家問題「深刻化」のウラで、新築マンション建設ラッシュが続く「日本のヤバい現実」

 国立社会保障・人口問題研究所が最新の将来推計人口を発表し、大きな話題になった。50年後の2070年には総人口が約8700万人、100年後の2120年には5000万人を割るという。

 ただ、多くの人が「人口減少日本で何が起こるのか」を本当の意味では理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

 ベストセラー『未来の年表 業界大変化』は、製造・金融・自動車・物流・医療などの各業界で起きることを可視化し、人口減少を克服するための方策を明確に示した1冊だ。

 ※本記事は河合雅司『未来の年表 業界大変化』から抜粋・編集したものです。

 空き家問題が深刻化しているというのに、新築のマンションや一戸建て住宅の建設が続いている。

 何とも不経済に思われるが、住宅メーカーや不動産会社にしてみれば「顧客の需要があるのだから、物件を提供するのが住宅企業としての社会的責任だ」ということだろう。人口減少という長期スパンの課題と、足元で起きている課題とを1度に解決することの難しさがある。

 「住宅市場に関しては、人口減少と歩調を合わせて需要が減っていくわけではない」との見方がある。人口が減少しても世帯数は増えていることが根拠だ。だが、世帯数を押し上げている要因を分析するとかならずしもそうとは言い切れない。

 世帯数を押し上げているのは一人暮らしだが、その多くは住宅を新規に取得するとは言い難い高齢者だからである。2020年の国勢調査を見てみると、一人暮らし世帯の総数は2115万1042世帯(一般世帯の38.0%)で、このうち65歳以上が671万6806世帯と約3割を占めている。

 むしろ、30代~40代といった住宅購買年齢層の減少ほど住宅需要が目減りしない理由は、相続税対策需要の高まりだ。

 不動産を取引する際の時価(実勢価格)より相続税がかかる基準となる価格(相続税評価額)が低いことから、相続税の負担を減らす節税方法として不動産の購入は広く知られている。地方に住む富裕な高齢者が東京や大阪の中心地にあるタワーマンションを購入するといった例は珍しくない。

 相続税対策を考える客層の取り込みを競う不動産会社は営業を強化しており、こうした富裕層の動きは、投機家による買い占めと並んで都心マンション価格の異常なまでの高騰を招く一因ともなっている。