若者全員が投票に行っても高齢者の票数に及ばない…老化ニッポンの「厳しすぎる現実」

AI要約

日本の少子化と高齢化が進む中、若者の政治参加が重要だが現実的な影響が限られることが示唆されている。

高齢者の票数が多いため、若者の投票率向上だけでは「シルバー民主主義」を是正するには不十分である。

今後も高齢有権者の割合が増え、社会の老化が進行することが予測される。

若者全員が投票に行っても高齢者の票数に及ばない…老化ニッポンの「厳しすぎる現実」

 人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。

 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。

 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。

 「社会の老化」を防ぐ政策を実現するには、政策決定の場を若返らせるのが最も手っ取り早く、有効な策である。したがって、第1の切り札は、衆議院・参議院両院の選挙(国政)に「選挙区枠」「比例代表枠」と並ぶ、「若者枠」を設けることである。

 2017年10月に実施された第48回衆議院議員総選挙の当選者の平均年齢は、54・7歳である。年代別に見てみると、最多は50代で33・1%だ。40代が26・9%、60代が24・5%と続く。30代は7・1%で70代以上の8・4%よりも低く、20代は1人もいない。

 「シルバー民主主義」という言葉がある。有権者人口に占める高齢有権者の割合が増えたことで政治家が得票を期待し、若い世代の意見よりも高齢者の意見のほうが通りやすくなることを指す言葉だ。

 これに対して、「若い世代は投票率が低い。自分たちの意見を国政に反映させたいのなら、まずは投票に行くことが大事だ!」などといった、おとなたちの声が少なくない。

 だが、ちょっと待っていただきたい。

 2020年時点の日本人の20代は、1186万1000人だ。対して、70代はその1・37倍の1625万2000人を数える。65歳以上の高齢者(3602万7000人)と比較したならば、3分の1程度にしかならない。

 30代の1344万7000人を加えた20代~30代の全員が投票に行ったとしても、人口規模が65歳以上人口の7割でしかないので、高齢者の票数にそもそも及ばないのだ。「シルバー民主主義」の是正という目的からすれば、「若者の投票率を向上させる」というのは、作戦として成り立っておらず、始める前から"負けゲーム"なのである。若い世代がこの冷酷な事実にどれほど気づいているかは分からないが、これでは無力感が広がり、政治に対してしらけるのも当然であろう。

 だからといって、「若者の投票率が低くても仕方ない」などと言うつもりはない。ただ、若い世代にいくら投票を呼びかけ、投票率が上昇したとしても、「シルバー民主主義」を是正することはできないという日本の現状に誰もが気づくべきなのである。

 しかも、有権者人口に占める高齢有権者の割合は年々増えていく。社人研の推計では2015年の32・2%から、2045年には42・3%へと10ポイント以上も上昇する。実数で比較すると、もっと分かりやすい。2045年の65歳以上人口は3869万1000人だが、20代、30代は合計で1897万3000人にすぎない。ダブルスコアであり、その差はさらに広がる。この事態を放置すれば、「社会の老化」はますます深刻化する。