光で育む、未来の食を変えるLED テックテック

AI要約

LEDの普及と応用についての記事。玉川大学の植物工場での栽培や岩手県のホシガレイ養殖など、光源革命の進化と可能性を紹介。

植物の成長に影響するLEDの光の波長や特性、新たな農業の未来像を探る取り組み。

海洋生物へのLED照明の応用と海産業の拡大に向けた挑戦の様子。

光で育む、未来の食を変えるLED テックテック

蛍光灯に続く第4の光源革命ともいわれるLED。その用途は拡大の一途で、照明はもちろんテレビのバックライトや信号機など生活に欠かせない存在になっている。

色とりどりに輝く赤、青、緑―。近未来のような光景を織りなすのは玉川大学(東京都町田市)の植物工場だ。太陽光の代わりにLEDを使い、湿度や温度をコントロール。露地栽培にはないクリーンで安定した品質の野菜を生産する。気候変動に左右されず、良質な商品を生み出す光技術の最前線を取材した。

玉川大は平成22年に「植物工場研究施設・宇宙農場ラボ」を立ち上げ、レタスやハーブなど葉菜類のほか、トマトなどの栽培を行っている。リーフレタス「夢菜」の商品化に成功。研究を推進する農学部先端食農学科の渡辺博之教授(64)は「光の波長によって植物の成長がガラリと変わるので面白くて仕方がない。日々発見の連続です」と話す。

赤色の光はレタスの生育を早め、赤と青の混合色はレタスに含まれる抗酸化成分を高めるという。LEDの特性を生かし、植物の生育に必要な波長の光を当てることで効率的な生産を可能にした。

さらにカリウムを約2割にまで抑え、腎臓病の人でも食べられる野菜や、宇宙で栽培できるジャガイモの研究なども進められ、新たな農業の未来像を描く。

日没を迎えた漁港の一角に緑色の光が浮かぶ。LEDに照らされた水槽を泳ぐのは、幻の魚とも呼ばれる「ホシガレイ」だ。

陸上養殖を手掛けるのは岩手県宮古市田老町漁協の指導増殖課長、畠山昌彦さん(56)。東日本大震災では壊滅的な被害を受けたが、奇跡的に無事だったコンブの種苗生産施設を活用し、復興に取り組んだ。

昨年6月、新たに整備された道路の高架下で、ホシガレイの養殖に挑戦する。10トン水槽を使い平均220グラムから養殖を始めた。目標を1キロに設定しLEDの照射時間を調整、夏の水温上昇も乗りきった。12月には最大1200グラムに成長し、10尾を初出荷、これまでに約100尾に達した。

設備が整っていけば、コンブの漁期以外でも、漁師の家族の収入につながる。「将来、海や漁業の環境もどうなるか分からない。できることはなんでもやっていきたい」と話す。

煌々(こうこう)と輝くLED。研究者たちの熱意とともに明るく未来を照らし出す。