日本製鉄・橋本英二会長「受注を一部カットせざるを得ない」と厳しい交渉も~単独取材

AI要約

経済産業省が価格転嫁の姿勢を公表し、価格転嫁の重要性について言及。

価格転嫁に後ろ向きな企業の実名公表について、意識の問題や構造的な問題を考察。

日本製鉄の橋本英二会長の価格転嫁に対する姿勢や取り組み方についてのインタビュー内容。

日本製鉄・橋本英二会長「受注を一部カットせざるを得ない」と厳しい交渉も~単独取材

経済産業省は2日、大企業など290社について、価格転嫁の姿勢などをランク付けしたリストを実名で公表した。法令違反でもないものを、あえて実名で公表するところまで踏み込んだ理由は何か。

それは、取引において立場の弱い企業が、適正な価格での取引ができずに割を食っていては、賃上げの原資を得られないからだ。

物価高でコストが上がっている分を価格に上乗せする。これにより、利益拡大→賃上げ→消費→経済活性化のサイクルが回ったり、設備投資が進んで、生産性の向上→利益拡大を狙ったりすることができる。

しかし一方で、今回で4度目の調査となるにもかかわらず、いまだ多くの大企業が、価格交渉や価格転嫁に後ろ向きな企業として実名を公表されるという不名誉な事態に陥っている。

それは、意識の問題なのか? 構造的な問題なのか?

企業が価格転嫁をどう考え、どのように取り組むべきかのヒントを探るため、価格転嫁の促進に真正面から取り組んでいる企業経営者にインタビューした。

第1回は日本製鉄・橋本英二会長にうかがった。(聞き手・経済部記者・城間将太)

Q.今年、大企業や中小企業で歴史的な水準の賃上げが実現した。そのためには、大企業から中小企業への価格転嫁が重要だ。経営トップとして、これまで価格転嫁にどのような姿勢で臨んできたのか。

橋本会長

日本製鉄の場合は、実は私が社長になりました5年前、2019年から価格の是正を進めてまいりました。これは、大企業から中小企業ではなく、私どもの取引先で発生したコストアップを、サプライチェーンを維持するために取引価格をアップするということで始めたんです。その時には、(近年のように)輸入物価が高騰するとか円安とかではなくて、「業種間のバランスが取れてない、それでは素材産業が今後継続できない」と。事業を継続するための費用、あるいは、サプライチェーンを日本全体として維持するための費用ということで、(日本製鉄が納める側にも)価格の是正をお願いしたのが5年前からです。

それが2021年度ぐらいから実現し、その流れの上で2022年度からの海外発のコストアップが展開してきた。今後は働き手不足に起因する賃上げが当然ですし、物流費がアップしているといわれますが、根っこは結局働き手不足です。ですから、今後も継続するということだと思います。