ウミガメ産卵地保護のための清掃活動 下田海中水族館と海上保安部が協働

AI要約

下田海中水族館がウミガメ産卵の障害となる海洋ごみ削減のため清掃活動を実施。 吉佐美エリアのビーチ群はウミガメの産卵地として知られ、2023年の産卵数が減少したことから取り組みが強化された。

海岸清掃や地域ごみ拾いの結果、ウミガメは掘り進んだ場所にごみがあると産卵を止める性質を持つことが判明。取り組みは、海洋ごみの内陸からの流入を防ぐことも含まれている。

地元住民を巻き込んだ清掃活動では、海岸や川底のごみが回収され、SDGsへの関心の高まりや海洋愛好家の増加によりごみの量は減少傾向にある。

ウミガメ産卵地保護のための清掃活動 下田海中水族館と海上保安部が協働

 下田海中水族館(下田市三丁目)が5月26日、ウミガメ産卵の障害となる海洋ごみの削減を目的とした清掃活動を大賀茂川(吉佐美)河口で実施した。5月30日の「ごみゼロの日」にちなんだ活動で、下田海上保安部も同活動をサポートした。(伊豆下田経済新聞)

 海水浴客やサーファーに人気の高い吉佐美エリアにあるビーチ群は、ウミガメの産卵地としても知られている。同館の調査によると、2022年は6件のウミガメの産卵が確認されたが、昨年2023年は産卵の形跡が一件も見られなかった。

 これを受けて同館では、2023年には11回の海岸清掃と2回の地域ごみ拾いを実施。海岸では45キロ、地域では375キロのごみを回収した。ウミガメは産卵場所を決める際、掘り進んだ場所にごみがあると産卵を止めてしまう性質がある。海岸に流れ着く海洋ごみの7~8割は内陸からのものであるという調査結果に基づく取り組みにもなっている。

 地元住民にも参加を呼びかける清掃活動は4年前から実施しており、今回で4回目。大賀茂川の河口となる舞磯(まいそ)浜に設置されたブースには水族館や海上保安部の関係者が待機し、集まった参加者たちにオリジナルのごみ袋や水族館の入場割引券を配布した。

 市内から参加した川口幸恵さんは「サーファーの夫と毎年参加している。移住のきっかけもきれいな海のそばでの暮らしだった」と話す。参加者はごみ袋を手に河岸や近くに広がる沼地周辺を清掃。主催者側は潮の引いた川底や芦の茂みの中など、人の手では届かない場所のごみをボートで回収した。

 約5時間の清掃作業で回収されたごみは30袋以上に及び、流木や廃棄された壁材など大型のものも多数あった。同館営業課課長の浅川弘さんは「4年前に比べれば随分、ごみの量は減った」と話す。要因としてはSDGsへの関心の高まりや、サーファーなど海洋愛好家が増えたことを挙げる。「森林を背後に控え、近くに植物を多く蓄える海岸をウミガメは好む。海の環境保全は生態系の維持につながり、町の資源確保にとっても必要なこと」と浅川さん。

 同館を運営する藤田観光(本社=東京都文京区)は「健全な憩いの場と温かいサービスの提供を通して潤いのある豊かな社会の実現に貢献する」の社是の下、SDGsの達成に向けたさまざまな取り組みを行っている。下田では海岸やペリーロードなどの清掃活動のほか、未利用魚の水槽展示や学校への出張講義など、海洋資源保護のための啓発活動に積極的に取り組んでいるという。